NATO、サイバー攻撃を武力攻撃と同等の攻撃と見なす可能性に言及

Liam Tung (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2021-06-16 14:37

 北大西洋条約機構(NATO)は現地時間6月14日に開催された首脳会議で、NATOのサイバー攻撃に対する方針を変更した。

 北米と欧州の30カ国で構成されている軍事同盟であるNATOは、ブリュッセルで開催された首脳会議で、国家安全保障上の脅威への対応を示した共同声明を発表した。 共同声明の中には、サイバー攻撃への対応に関する内容も含まれていた。

 近年では、米国の大手石油移送パイプライン企業であるColonial Pipelineへの攻撃や、SolarWinds製品に対するサプライチェーン攻撃、NotPetyaやWannaCryなどのランサムウェア攻撃など、国家の重要インフラや経済基盤に重大な影響を与える可能性がある攻撃が増えている。この事態を受けて、NATOは「包括的サイバー防衛政策」を承認した。共同声明では、サイバー攻撃には「ケースバイケース」で対応し、サイバー攻撃を武力攻撃と同等の攻撃と見なす可能性があることも明記された。

 共同声明では、「われわれは、この変化し続ける課題に立ち向かうため、NATOの3つの中核的任務と全体的な抑止力および防衛体制を支え、レジリエンスを強化する『包括的サイバー防衛政策』を承認した」と述べている。

 声明ではさらに、「われわれは、どのような場合にサイバー攻撃によって第5条が発動されるかについての決定は、北大西洋理事会がケースバイケースで判断することを再確認した。NATO加盟国は、度重なる重大な悪意のあるサイバー活動の影響は、特定の状況下では、武力攻撃に相当すると見なされる場合があると認識する」と述べている。NATOは2014年に、サイバー攻撃によって条約第5条(集団的自衛権について定めた条項)が発動される場合があると方針を改めている。

 今回の共同声明では、必要と見なされれば「われわれに危害を与えるものに対してその対価を払わせる」と宣言している。ただし、現在の欧米諸国の政策では、大規模なサイバー攻撃に対する対応は、国家主導のハッキングを行っている国を名指しで非難するだけに止まっているのが現状だ。

 今回の首脳会議では、中国のサイバー能力や、偽情報拡散キャンペーン、世界規模での勢力拡大にも注目が集まった。

 共同声明では、「中国の拡大する影響力と国際政策は、われわれが同盟として共同で対処する必要のある課題となる可能性がある」と述べた上で、次のように付け加えている。

 「われわれは今後、同盟の安全保障上の利益を守るという観点から中国に関与していく。われわれは、従来よりも高度で新しい破壊的技術を悪意を持って利用したサイバー脅威、ハイブリッド脅威、およびその他の非対称的な脅威にこれまで以上に直面しており、これには偽情報拡散キャンペーンも含まれる」

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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