リコーは6月17日、顧客企業のデータを独自の自然言語処理で分析し、業務の効率化や新たな価値の創造を支援するサービス「仕事のAI」を提供すると発表した。
仕事のAIでは、自然言語処理を用いて意味の理解や文書の分類などを行うことで、作業の代替に加え、担当者の判断や製品の品質改善を手助けする(図1)。分析対象のデータは、報告書やメール、チャットといった「非定型ドキュメント」が中心だという。
リコーならではの強みとして、「世界で100万社以上の顧客が擁するデータ」がある。同社は今回、既存顧客から許諾を得て文書や映像、音声といった情報資産を預かり、それを自然言語処理で分析。あらかじめ膨大なデータを学習しているため、導入企業は一週間程度で利用できるという。
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リコーは2017年から定型/非定型のドキュメントに対して、人工知能(AI)を活用したさまざまなサービスを提供してきた。そうした取り組みの中で同社は、コンテキストの理解に加え、文書の分類や重要度の判定を行うAIを開発し、今回のサービス提供に至った。同社はクラウドアプリ基盤としてRSI(リコースマートインテグレーション)を展開しており、この基盤上に仕事のAIを構築して顧客企業に提供する。
リコー 代表取締役 社長執行役員CEOの山下良則氏(出典:リコー)
発表会に登壇した代表取締役 社長執行役員CEO(最高経営責任者)の山下良則氏は、データビジネスへの参入について「私は重要な経営判断を行う時、創業者だったらどう考えるかと自問自答する。われわれの創業の精神は、『人を愛し 国を愛し 勤めを愛す』という『三愛精神』。今回の事業は、生産年齢人口の減少やデジタル化の遅れといった日本の社会課題に目を向けている。われわれは、デジタルで“はたらく”の生産性を向上させることで、経済の活性化に貢献できると考えている」と説明した。
リコーグループは、顧客への提供価値を「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES」と定め、OA(オフィスオートメーション)メーカーからデジタルサービスの会社への変革を図っている。「仕事のAIは、われわれが提供するデジタルサービスの“進化の第一歩”とお考えいただきたい」と山下氏は語っていた。
リコーは仕事のAIの第一段として、食品業界の大手/中堅企業向けに「RICOH 品質分析サービス Standard for 食品業」を7月15日に発売する予定。コールセンターやヘルプデスクに寄せられる膨大な問い合わせ情報を自然言語処理で分析し、重要度順に表示することで、潜在的な課題の発見などを支援する。従来は人手やテキストマイニングツールによって分析してきた工程をAIで自動化/省力化することで、業務効率の向上に加え、重大な事案を見落とすリスクの低減や属人性の解消も期待される。
税別価格は、初期費用が10万円、月額基本料金が20万円。消費者の声が3000件を超えた場合、1件当たり5円課金される。今後は対応する業種や業務を増やすとともに、中小企業向けサービスを展開することも計画している。2025年までに100億円の売り上げを目指す。
発表会では、食品メーカーに届く消費者からのサンプルデータを対象に、RICOH 品質分析サービス Standard for 食品業のデモが実施された。大手企業の場合、1日100~500件ほどの問い合わせが寄せられるというが、同サービスでは健康被害など企業の経営に大きな影響をもたらす問い合わせを抽出することができる。
また、「消化器症状」など異変が起きた体の箇所別に分類することも可能(図2)。消化器症状に関する訴えでは「胃がもたれた」「お腹の調子が悪くなった」などさまざまな表現があるが、それらをあらかじめAIに学習させておくことで、分類を実現している。加えて、「医者に相談した」「病院に駆け込んだ」など、健康被害の重要度を示す文言が含まれているかをチェックし、その度合いをスコア化する。
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