「FileMaker」とは--プログラミングの知識がなくてもシステムを構築

伊達諒

2021-06-30 07:00

 デジタル社会で生き残っていくためにはデジタルトランスフォーメーション(DX) を進めていくことが不可欠ですが、そのためには、業務のデジタル化やシステム化は避けられません。しかし、システムを導入するとなるとシステム開発会社に依頼する必要があり、多額の費用が発生するのではないかと懸念する経営者も多いと思います。

 システム会社に発注すると、計画から完成までに年単位の期間を要することもあります。費用は規模にもよりますが、数百万円から数億円ということになります。これだと、導入に二の足を踏むのも理解できます。

 しかし、システムを自前で作ってしまえば、外注に掛かる費用は発生しません。「Claris FileMaker」というソフトウェアを活用すれば、プログラミングの知識がなくてもシステムを作ることができます。

FileMakerとは?

どのようなソフトウェアなのか?

 FileMakerは、「カスタムApp」と呼ばれる、企業内などで活用するオリジナルのシステムを開発できる、ローコード開発プラットフォームです。元々このソフトウェアは、「カード型データベース」でした。たとえば、1つのカードに「名前」と「住所」を記入し、それを何枚も作成し、自由に検索したり、印刷したりすることができるソフトウェアです。図1のようなイメージです。

図1
図1

※クリックすると拡大画像が見られます

 カード型データベースが進化を遂げ、今では前回紹介した「リレーショナルデータベース(RDB)」と呼ばれています。1つの種類のカードについて検索できるカード型データベースに対し、リレーショナルデータベースは複数の種類のカードを関連付けることができます。

 たとえば、「名前と住所」のカードと「名前と血液型」のカードがある場合に、血液型がB型の人の住所を抽出することは大変なことです。「名前と血液型」のカードからB型のカードを取り出し、次に「名前と住所」のカードの中から、その名前と同じカードを抽出しなければならないからです。100枚位のカードであれば手作業でもできますが、10万枚のカードだったらどうでしょうか。絶望的になるはずです。

 リレーショナルデータベースでは、そのような場合に両カードに共通する「名前」を連結し、2つの種類のカードを一体化することができます。血液型に「B型」と入力して検索すれば、連結された別のカードから瞬時にB型の人の住所が検索できます。(図2

 リレーショナルデータベースとなったことで、さまざまなデータ処理が行えるようになり、会社独自のカスタムAppを作ることができるようになりました。

PCのほかiPadでも動作

 FileMakerの動作環境は、「Microsoft Windows」と「macOS」になります。WindowsとmacOSでPCのOSの約9割を占めるので、多くの人が利用可能です。同じリレーショナルデータベースソフトの「Microsoft Access」は、Windowsにしか対応していないので、両OSが混在している環境では使えませんが、FileMakerであれば両OSが混在する環境でも問題なく利用することが可能です。

 開発環境としては、WindowsとmacOSになりますが、利用環境としては、WindowsとmacOSのほか、「iOS」「iPadOS」にも対応しています。したがって、「iPhone」や「iPad」でもデータベースを利用できます。屋外などでPCが使えない環境でも、iPhoneやiPadから会社のデータベースを利用可能です。

 このように、複数のOSで動作することができるソフトウェアを「マルチプラットフォーム」または「クロスプラットフォーム」と言います。

コスト

 ライセンスの種類にもよりますが、ソフトウェアの費用は小規模な事業所であれば、数万円から数十万円程度です。FileMakerのシステム開発を外注することも可能ですが、シンプルな業務アプリケーションであれば、少し学習すればプログラミングの知識がなくても自分で作ることができます。もちろん、その場合はソフトウェアの購入費用だけで済みます。

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