Gartnerによると、サービスとしてのクラウドインフラストラクチャーを利用する企業の75%が、2022年までに「計画的な」マルチクラウド戦略を導入すると予想されています。これは、2017年の49%から大幅な増加であり、企業が4大ハイパースケーラー(Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud Platform、Alibaba)が提供するサービスを「うまく組み合わせて」利用するトレンドは弱まることはないでしょう。
そうは言うものの、Gartnerが「計画的な」という表現を使っていることは、その裏には「偶然」あるいは「場当たり的」に導入されるマルチクラウドが存在していることを物語っています。今回は、米国を拠点に過去30年にわたりバックアップの最新動向の研究開発に当たるデイブ・ラッセル(Dave Russell)の観点を借りつつ、マルチクラウドの現状と展望をひも解きます。
ITの世界で、上記のような話は昔から語られています。インフラストラクチャーは、短期で発生するプログラムの修正と、増加し続けるデータ量の管理に対応するために、日々刻々と進化、拡大を続けています。そして、今回の世界的な新型コロナウイルス感染症の大規模流行(パンデミック)が、このことを浮き彫りにしました。
Veeamが2021年3月に発表した「データプロテクションレポート 2021」によると、53%の経営者が「パンデミックの中、事業継続に注力する必要があり、戦略的デジタル変革への取り組みが進まなかった」と回答しました。企業は、新型コロナウイルスがもたらした危機を乗り越えるために、デジタルインフラストラクチャーやスキルを短期的に導入しました。1990年にIBMのストレージ技術者としてキャリアを始め、Gartnerで約13年にわたりバックアップのアナリストを務めた経験を持つRussellによれば、今はまさに、それらをどのように一貫性があって長期的なものに進化させることができるかを検討する時なのです。
マルチクラウドに関しても、同じことが言えます。Flexeraのレポート「2021 State of the Cloud(英語)」によると、92%の企業がマルチクラウド戦略を立てています。では果たして、どのぐらいの企業が「計画的な」マルチクラウド戦略を立てているのでしょうか。もちろん、多くの企業が各種のクラウドプロバイダーを利用するメリットとデメリットを比較しているでしょう。そして、複数のパブリッククラウドプラットフォームに分散するデータの管理と保護を行えるよう、クラウドデータマネジメント戦略を導入しているでしょう。しかし、大多数の企業が、買収や合併により、またはパートナー企業との協業のために、あるいはコスト削減の目的で、知らず知らずのうちに複数のクラウドプロバイダーを使用している可能性が高い点を見逃してはいけません。これこそマルチクラウドによるリスクが、クラウドのメリットを相殺してしまう可能性があるところです。