出社組と在宅組が混在--ハイブリッドな職場に潜む「情報格差」リスクの正体

國分俊宏 (シトリックス・システムズ・ジャパン)

2021-06-24 06:45

 「最近、出社してる?」という質問が挨拶代わりのように交わされるようになってきました。緊急事態宣言が解除されワクチン接種も始まり、人々がオフィスに戻りつつあるなか、「オフィス派か? テレワーク派か?」といった会話がよく聞かれます。

 「自宅の方が集中できる」「オフィスの方がコミュニケーションが取りやすい」「通勤時間がもったいない」「在宅勤務は働きすぎてしまう」など、それぞれ働き方にそれぞれメリットや課題を見出しています。

 しかし「テレワークか? オフィスか?」よりも、勤務時間の一部や週の一部でテレワークを活用するなど、より柔軟に働きたいと考える人も多くいます。

 Citrixが行った意識調査(PDF)によると、90%以上の従業員が従来通り毎日オフィスに出社するよりも、テレワークとオフィス勤務を柔軟に選択するハイブリッドな働き方を望んでいることが分かりました。雇用主もリモートワークの経済的、文化的メリットを認識しており、82%の企業が、従業員のエンゲージメントを維持し、新しい人材を採用し、運営コストを抑えるために、ハイブリッドモデルの導入を計画していると答えています。

 しかし、ハイブリッドワークへの移行は簡単ではありません。

 ハイブリッドな働き方は表面的には魅力的です。しかし、ハイブリッドな環境の働き方モデルは、職場に戻る人だけが得られる情報やコンテクストを、テレワークを継続する人がアクセスできないという可能性が生まれ、コミュニケーションの差を生みだし、チームワークとして全体の生産性に影響を生むリスクが議論されています。

 この問題を解決するために、オフィス型のリモートワークではなく、まったく新しい分散化した環境の中で組織を運営するのだという合意をした上で、テクノロジーと新しいポリシーを導入し、公平な環境を構築する必要があります。

 オフィスにいる従業員もリモートで働く従業員も、透明性のある効率的な方法で平等に働き、コラボレーションし、イノベーションとビジネスの成長を促進するためのインフラを整えることが必要です。

リモート会議が普及し、定着していく理由

 コロナ以前も、テレワークやリモート会議という働き方は存在し議論されていました。しかし、今のように普及しなかった理由の一つは、テレワーク利用の対象を一部の人に限定していたからです。

 コロナ禍によって、強制的ではあったとしても全社員がテレワークを実践したからこそ、テレワークが普及し徐々に定着しました。全社的にテレワークに取り組んだため、企業から提供される環境のもと従業員は全て平等になったからです。

 また、会議も全員がリモートで参加することで、情報量が平等に保たれました。また、感染対策を理由に、お客さまもパートナー企業もリモートでの対応が必要となり、これまで社外との会議は対面でという漠然とした概念が払拭され、社外の関係者ともリモートで会議が行われるようになりました。企業のみならず、社会全体が同じ環境だったからこそ新しい働き方が受け入れらたのです。

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