しかし、ハイブリッドな環境になり、オフィスの会議室にいる人たちの会話に、テレワーク組が参加するような形になると、テレワーク中の従業員だけホワイトボードが使えない、電話を切ったあとの雑談的なコミュニケーションには参加することができないなど、情報量に格差がでてきてしまいます。
そのため、テレワーク中の従業員が何かしらの機会を失っていると感じてしまった場合、その従業員は自身がテレワーク勤務の方が生産性が高いと感じていても、やむを得ずオフィスに戻ってくるかもしれません。
企業がハイブリッドモデルに移行する際には、平等な体験を維持し、従業員が勤務地によって不利な立場にならないようにする配慮が大切です。
ハイブリッドな会議を成功させるためには
ハイブリッドな職場環境で起こり得る可能性ある差を縮小化し、オフィスにいる人たちも、テレワーク中の人たちも気持ちよく一緒に働けるためには、適切な環境を整えることが重要です。
例えば、会議を調整する際には、その会議の参加者全員リモート参加なのか? 一部出社して参加するのか? あらかじめ合意があれば、適切な準備が可能です。
また、オフィスの会議室で行われる会議にリモートから参加する従業員がいる場合、会議室のカメラを使用することが多くあります。
しかし、場合によっては参加者一人ひとりの顔が見にくく表情が見えません。会議室で参加している人も、1人でもリモートで参加する従業員がいる場合は、個人用の端末のカメラも使用するなどして配慮することも可能です。
また、ホワイトボードの代わりに共同作業管理ツールを使用することで、作業環境を平等に保つなどすれば、どこから会議に参加していても、会議へのモチベーションを低下することなく意欲的に参加してもらえます。
ハイブリッドな職場を実現するためには
ハイブリッドな職場を実現させるためには、すべての従業員に適切なワークプレースが準備されていることが重要になります。オフィスにいないとアクセスできない情報があったり、オフィスの方がアクセスするスピードが速かったりする場合、テレワーク中の従業員はオフィス勤務の従業員よりも生産性が低下してしまい、従業員エンゲージメントが低下する恐れがあります。
そのような状況に陥らないために、分散化したワークを前提にし、オフィスを中心としないという合意が重要です。場所やデバイスを問わず、チームの一人ひとりがアプリケーションや情報に平等にアクセスでき、効率的なコラボレーションを可能にする共通の環境が必要です。
クラウドやテレワークが普及したことですでに上記のような環境が整っている企業も多くあります。今後は、職場がハイブッドになっていくことで「今日は誰が出社しているんだろう?」「今日はオフィスに行って、気持ちを切り替えて仕事をしたいけど、席は空いているだろうか?」などの疑問に対して、すぐに情報提供できるようなアプリケーションが必要になるでしょう。
このように、ハイブリッドワークは理想的な未来の働き方ですが、リスクがあることも事実です。この内在するリスクを理解し、ハイブリッドワークへの移行を慎重に計画する企業は、落とし穴を回避し、従業員がどこにいても平等に革新と創造の機会を得られる包括的な環境を育み、自分自身と企業の成功に貢献することを期待できるでしょう。

- 國分俊宏(こくぶん・としひろ)
- シトリックス・システムズ・ジャパン セールス・エンジニアリング本部 エンタープライズSE部 本部長
- グループウェアからデジタルワークスペースまで、一貫して働く「人」を支えるソリューションの導入をプリセースルとして支援している。現在は、ハイタッチビジネスのSE部 部長として、パフォーマンスを最大化できる働き方、ワークライフバランスを支援する最新技術を日本市場に浸透すべく奮闘中。