HPE Discover 2021

全ての企業は「テクノロジーカンパニー」に--HPEネリCEO

渡邉利和

2021-06-23 14:30

 HPEは米国時間6月22~24日の3日間にかけてグローバルイベント「HPE Discover 2021」をオンラインで開催している。初日の基調講演には、同社 社長兼CEO(最高経営責任者)のAntonio Neri氏が登壇した。

 同氏はまず、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で全世界が危機的な状況に陥り、多くの企業が困難に直面したことに触れた。その上で、ワクチン接種の拡大などで“コロナ後”の状況が見え始めてきた現在、次の「デジタル化された働き方」について考えていくべきだと指摘。これからを“Age of Insight”(洞察の時代)と位置付け、どのようにして「新しいデータドリブンなビジネス変革」を導くのかを例を挙げて語った。

 Neri氏はデータの価値が企業に取って極めて重要なものとなっていることを強調。「データはデジタル経済を推進する新しい通貨」であり、「データは今や最も価値のある“資産”となっている」とした上で、「将来のいつの日か、データがバランスシート(貸借対照表)上の資産として記載されるようになる日がくると予想している」と語った。

 とはいえ、今や大量にデータを収集するだけでは十分とは言えず、大量のデータからいかに迅速に“価値”を引き出すことができるかが重要になる。同氏は15年ほど前に「データ爆発」が業界のホットトピックとして語られ始めた時期を振り返り、当時は「Volume(量)、Variety(種類)、Velosity(増加速度)の“3V”が重視されたが、これからはデータから引き出すインサイトが重要となる。多くの企業は既に大量のデータを持っているが、インサイトは貧弱なままだ。“洞察の時代”では、Value(価値)を加えた“4V”が重要となる」と指摘した。

 さらに同氏は具体例を挙げて、デジタル技術やデータ活用が社会のあらゆる面にメリットをもたらし、変革を推進していることを紹介した。例えば、人類の遺伝子解析(Human Genome Project:ヒトゲノム計画、2000年にドラフト発表)では、かつてはある特定の被験者の全遺伝子配列を決定するのに20億ドルの予算を費やしたが、現在では1000ドル以下で実行でき「(誰かの遺伝子配列ではなく)あなた自身の遺伝情報に基づいた治療や創薬を行うことも可能になった」という。

 Neri氏は米国最大の自動車会社であるGeneral Moters(GM) 会長兼CEOのMary Barra氏と対談し、Barra氏が主導する同社の“自動車製造会社”から“テクノロジーカンパニー”への変革について語り合った。また、フォーチュン500企業でもある金融サービス技術企業のFIS(Fidelity Information Services)で最高データ責任者を務めるRobert Legters氏とは、ユーザー企業のデータ活用を支援するに当たって、HPEのテクノロジーやサービスがどのように役立っているかについて語られた。

General Moters(GM)会長兼CEOのMary Barra氏(右)とHPE 社長兼CEOのAntonio Neri氏(左)
General Moters(GM)会長兼CEOのMary Barra氏(右)とHPE 社長兼CEOのAntonio Neri氏(左)
FIS 最高データ責任者のRobert Legters氏(右)とAntonio Neri氏(左)
FIS 最高データ責任者のRobert Legters氏(右)とAntonio Neri氏(左)

 こうした対話からは、HPEが今やIT関連の製品を販売するという立場よりも、顧客企業のビジネスをテクノロジーを活用して支援する、サービス企業という立ち位置を前面に出してきていることが伝わってくる。同氏は2019年のHPE Discover 2019で同社の製品全てをas-a-Serviceで提供すると発表しており、同社自身の変革も順調に進展していることが最近の新製品や新サービスの発表からもうかがえるが、こうした取り組みがいよいよ最終段階に入っていることが感じられる。

 最後にNeri氏は、「HPE Greenlake」関連の新たな取り組みについてまとめて発表した。なお、HPE GreeLakeは登場当初は同社製のサーバーやストレージなどのハードウェア製品をオンプレミスで導入する際に利用可能なクラウドライクな消費モデルという位置付けだったが、現在では同社が提供するクラウドサービスというメッセージが前面に打ち出されている。

 同氏はHPE GreenLakeを「Edge-to-Cloud Platform」と位置付け、「われわれがあらゆる場所にクラウドサービス/クラウド体験をどのように届けるかを示すもの」だと説明した。業績も好調とのことで、第2四半期には受注が前年同期比で41%増という大幅な成長を遂げ、顧客企業数は1200社超、販売パートナー数は900社に達するという。コロケーションパートナーとしてはCyrusOneやEquinixと協業していることで、主要パブリッククラウドと同様のスケールを実現しているという。

HPE GreeLakeの最近の実績値
HPE GreeLakeの最近の実績値

 GreenLakeに新たに追加されるクラウドサービスも紹介された。まずは「5G Core Systems」の実装だ。5G(第5世代移動体システム)ネットワーク構築の際のインフラをGreenLake上に構築することで迅速な展開を可能にするものだ。また、医療情報サービスとして、米Epicの医療情報アプリケーションをクラウドサービスとして提供する「HPE GreenLake for Electronic Medical Records(EMR)」、非構造化データなどの解析に利用される「Splunk」もGreenLake上でクラウドサービスとして提供されるという。

 このほか、クラウド上の新たなデータサービスとなる「HPE Alletra」、クラウドサービスのプロビジョニングや運用管理の簡素化や自律的な最適化を行う「HPE GreenLake LIGHTHOUSE」、ゼロトラストの発想に基づく新たなクラウドセキュリティ基盤「Project Aurora」、Intelとの協業で実現された「Silicon On-Demand」などが紹介された。これらの新機能は、今夏~年内というタイミングで順次提供開始される予定となっている。

 Neri氏は「HPE GreenLakeによって、あなた方の“データドリブンエンタープライズ”への変革を今日から支援できる。as-a-Serviceモデルへの移行を自身のペースで実現できる」とした上で、「私は、全ての企業は“テクノロジーカンパニー”だと信じている。テクノロジーカンパニーであることが、次の世代のデジタル経済へ参加するための要件となる」と語り、最新の技術を活用して変革を実現していくことが企業の継続的な成長のために不可欠だと強調して講演を終えた。

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