ヘルスケア分野への取り組みは、大手IT企業の最高経営責任者(CEO)らのTo-Doリストでトップを占めているようだ。Amazonは独自にヘルスケア事業を立ち上げており、Appleは「iPhone」を患者とのエンゲージメントや診断のためのツールに変えようとしている。また、Googleの親会社であるAlphabetは同社の投資部門や人工知能(AI)、アナリティクスを通じてヘルスケア分野に大きな力を注いでいる。
さらに、他の大手IT企業も後れを取っているわけではない。Microsoftも壮大な計画を有している。同社は、ヘルスケア業界の最も差し迫った問題のいくつかに取り組む上でテクノロジーが役立つと考え、同分野に目を向けてきている。
Microsoftのグローバルヘルスケア&ライフサイエンス担当コーポレートバイスプレジデントであるTom McGuinness氏は「最も古くからある問題の中には、データの分断や、ケアチームの分断、そしてはっきり言って患者と彼らのケアとの分断といったものがある」と述べた。
ヘルスケア分野のさまざまなところから出てくる不満が俯瞰的に捉えられておらず、ヘルスケアとソーシャルケアの間や、一次診療と病院での薬剤投与の間などに溝があるという問題は昔から取り沙汰されている。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、新たな分断が深刻化している。それはオンライン診療と対面診療との間の分断だ。
「われわれがパートナーや顧客とともに解決に向けて取り組んでいる興味深い疑問のいくつかは、オンライン診療を診療現場でのエンゲージメントのようにいかに物理的な診療とうまく結びつけるかというものだ。患者は親身になってくれていると感じられるエクスペリエンスを求めており、さまざまな場所で同じ説明をするのは嫌だとも思っていることを、われわれは理解している」(McGuinness氏)
オンラインの世界と物理的な世界の溝を念頭に置き、Microsoftは2020年10月、同社初の業界向けクラウド「Cloud for Healthcare」の一般提供を開始した。この製品は、対面でのケア提供に慣れている企業を念頭に置いたリモート診療機能を中核に据えている。
例えば「Microsoft Teams」の予約アプリはCloud for Healthcareで初めて登場し、医療機関がTeams内でリモート診療のスケジューリングや管理、診療行為を実施できるようにしている。また、同社の「Healthcare Bot」サービスは患者のトリアージを支援できる(COVID-19に特化したボットは複数の国々で患者の自己診断に利用されている)とともに、必要に応じて診療予約を取れるよう、人間のオペレーターに接続する機能も有している。