米航空宇宙局(NASA)のコンピューティングにおける数々のイノベーションは宇宙の探索を支えるために開発されているが、これらを地球でも応用し、役立てられるよう、その一部がダウンロードできるようになっている。
NASAのBill Nelson長官はプレスリリースで、月や火星のミッションと地球でのオペレーションの両面でNASAの業務にソフトウェアは不可欠だと述べている。
NASAのソフトウェアカタログは、宇宙技術ミッション部門(STMD)が運営する「Technology Transfer」プログラムのサービスだ。NASAがNASAのために開発した技術を一般向けに広く提供し、米国の納税者がメリットを最大限に生かせるようにすることが重要だとしている。
「幸いなことに、この技術は無料で一般されている。人工衛星や宇宙飛行士、エンジニア、科学者向けのソフトウェアが、業界や企業の垣根を超えて応用、適応されることは、NASAが米国、そして世界にもたらす広範な価値の証だ」(Nelson氏)
個人や企業がNASAのソフトウェアをどのように利用できるかについて、NASAは詳しく説明している。この中で、ライセンス供与を受けることに関心があれば、「technology.nasa.gov」のサイトでNASAの技術を見つけ、ライセンスの申請と商用利用の計画をオンラインで提出するよう求めている。
申請が受理されれば、NASAのライセンスマネージャーとともにライセンス契約の条件を設定する。その後、最終契約に署名する。
NASAはこれまでにも、「TetrUSS」をはじめとするさまざまな取り組みで民間や公共の組織と協力してきた。NASAが開発した数値流体力学プログラムによって、抗力を最小化し、燃料効率を最大化できるようになっており、TetrUSSで航空機の排出ガス削減に貢献しているという。
TetrUSSはNASAで特にダウンロード数が多いアプリケーションの1つとなり、航空機のほか自動車、建築でも利用されている。
また、起業家や政府機関、研究者などが利用しているNASAのプログラムとして、NASAのデータを可視化できる「WorldWind」も挙げられている。WorldWindは現在、沿岸警備隊が人工衛星のライブ映像と海洋データからマップを生成する際に役立てられているという。また、「世界各地の意思決定者が希少資源を管理」したり、「気候が淡水資源に与える影響を研究者が理解」する上でも役立っている。
Technology TransferプログラムのエグゼクティブDan Lockney氏は、気候変動の影響を緩和するために、NASAの豊富なプログラムを利用できるようにすることで、起業家や経営者、学術機関、政府機関が現実の課題を解決できるよう支援していると述べている。
このほか、用意されている環境科学分野のソフトウェアには、燃料電池、ソーラー電池、バッテリーを使うソーラー発電システムの規模と発電要件を計算できるツールや、ソーラー航空機のコンセプトを分析できるコードがある。「発電用風力タービンの効率化」に役立つ可能性のある数値流体力学のソフトウェアもある。
NASAのソフトウェアカタログには800本を超えるプログラムがあり、システム検査、航空学、データ処理と画像処理、自律システムといったカテゴリーがあるという。ソフトウェアはオンラインで検索可能なレポジトリーで継続的に更新されている。
NASAは米国時間7月13日にウェビナーを実施し、ダウンロードのプロセスについて学んだり、利用可能なNASAのソフトウェアについて質問したりできる機会を設けるという。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。