「Amazon Robotics」チームは、2018年に、Amazonが膨大に抱えている多様なデバイスのメンテナンスを行う新たなバックエンドシステムの構築を始めた。この新しい「Comprehensive Device Management(包括的デバイス管理)」(CDM)システムは、複数のチームが新たなロボットを導入したり、デバイスを最小限の業務の中断でアップデートしたり、デバイス群のセキュリティを横断的に管理したりすることを可能にするものだ。その集中管理レイヤーは、「AWS IoT」で構築されている。
Amazonの最高技術責任者(CTO)であるWerner Vogels氏は、最近になって、同社が新たに導入する、各施設のデバイスを横断的に管理するCDMについて詳しく説明するブログ記事を投稿した。同氏はその中で、CDMは「Amazonのロボット運用を真にスマートなものにするための中核的要素」であり、「常に同じ条件を必要とする従来のロボットデバイスから飛躍的な進化を遂げた」と述べている。
Vogels氏は、米ZDNetの取材に対して、「真にスマートな」ロボットを作るためには何が必要かを詳しく語ってくれた。
「それはまず、何が起きているかを理解するために、持っているデータを収集できるようにすることから始まる」と同氏は言う。「これは例えば、ロボットを導入しようとしている生産ライン全体のデータを集めるといったことだ」
Vogels氏は、適切なデータがあれば、不具合が発見された場合に「ライン全体を止める」ような、よくある話ではあるが、コストがかかりすぎるやり方をメーカーが避けられるようになると語った。
「次世代の車両を導入するからといってロボットを作り直していては、運用のコストが非常に高くなってしまう」と同氏は言う。「しかし、ロボットにカスタマイズの余地が大きく、搭載するソフトウェアに柔軟に対応できる能力があれば、より多くの機能を持たせることができるし、発生した不具合もすぐに修正することができる。そして私は、現代のロボット工学においては、その適応能力を持たせるということが非常に重要だと考えている」
Vogels氏は、CDMのようなシステムは、Amazonの小売部門などのロボットメーカーがAWS IoT利用することで、適応能力が高い統制されたデバイス群を作れることを証明するものだと話す。
「AWSでもAmazonでも、私たちが力を入れているのは、再設定できたり、新しいタスクに合わせて適応させたりすることが可能なロボットを作ることだ。これは、私たちが常にこれらのロボットの新しい機能を生み出し、作り続けているからだ」と同氏は語った。「そのためには、ロボットで実行されるソフトウェアを常にアップデートし続ける必要がある。またそれを、1台だけでなく、4万台、5万台のロボットで行えなければならない。私たちが使っているロボットが非常に多岐に渡っていることを考えれば、これはかなりの難問だ」
Vogels氏はまた、CDMは、「良いロボット」は必ずしも以前のロボットと比べて見た目が大きく違うわけではないことを証明していると指摘した。
「このデジタルと物理が融合した世界は大きく変わりつつあるが、それは別に私たちのフルフィルメントセンターや製造環境だけの話ではない」と同氏は述べている。「例えばAudiの最新モデルには、1200個くらいのセンサーが使われているだろうと思う。Teslaの車なら、それが車輪があるコンピューターのようなものであることは見れば分かる。しかしAudiの最新モデルの外見は、古いAudiとそれほど変わらない。派手さはないし、従来通り控えめに見える。それらのモデルは、実際には車輪が付いたコンピューターそのものだが、実際にAudiに乗っている人たちは、Teslaのような高度な車だとは感じないだろう。なぜなら、その魔法が使われているのは舞台裏のことだからだ」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。