APIを取り巻く環境の今後
雪だるま式に利用が高まる一方で、課題もあります。前回紹介したセキュリティ、従量課金やサブスクリプションといった料金体系に対する理解に加え、プライバシーの保護や公平性の確保なども議論が進んでいます。
プライバシーの保護については、検索エンジンやSNSなどが広告のために過度に情報収集しすぎているとして、法規制が進んでいます。検索エンジンやSNSもAPIを提供しており、こうした法規制に対応した変更を整備しつつあります。
ほかには、悪意のある組織がSNSで提供されるAPIを悪用し、大量の個人情報を収集したといった事件も発生しており、APIを利用するアプリケーションのポリシーや審査なども対策が進められています。
公平性についても多くの議論があります。例えば、人工知能(AI)を利用して個人の与信審査をするAPIがある場合、この与信の判断が特定の人種や性別、年齢などで差別しない公平性があるかどうかは、我々の生活に大きく影響を及ぼします。銀行手続きのように直接入出金するサービス以外、オンラインショップなどでも背後でこういったAPIを利用しているかもしれません。この時に公平性、透明性のあるサービスを提供できるかどうかは、API利用者として考慮する必要があるでしょう。
このようにいくつかの問題がありますが、普及の経緯で紹介した通り、技術的にはさまざまな解決方法が提案され、改善が続けられてきました。今後も新たな問題があれば、それぞれに対応する技術や法規制などが議論、提供されると考えられます。
APIを通じて提供されるサービスは今後もますます増加することが見込まれ、難しそうだと敬遠していても無関係で居続けることは難しいでしょう。
- 岡崎 隆之
- Dropbox Japan アジア太平洋・日本地域統括ソリューション本部長
- サン・マイクロシステムズ、ACCESS、グリーを経てエンタープライズ分野からコンシューマー分野に渡る様々な分野でのエンジニアリングに従事。開発生産性や、チーム間の共同作業について様々な施策を実施し生産性向上に貢献。2015年からDropboxカスタマーサクセスチームに所属し、お客様の生産性向上に貢献している。