SAPジャパンは7月6日、オムニチャネルに対応するカスタマーエンゲージメントプラットフォーム「SAP Emarsys Customer Engagement」の国内提供を開始したと発表した。
SAP Emarsys Customer Engagementは、2020年11月にSAPが買収したEmarsysの製品。これをSAP Customer Experienceポートフォリオに加えたものだ。SAPジャパン バイスプレジデント SAP Customer Experience 事業本部長の富田裕史氏は、主なターゲットとして消費財および小売業界を挙げており、「マーケティングを管轄する最高マーケティング責任者(CMO)や、売り上げを最大化しようとしている最高売上責任者(CRO)などに訴求していきたい」としている。
SAPでは、カスタマーエクスペリエンス(CX)において「顧客データ」「コマース」「マーケティング」「販売」「サービス」という各分野でさまざまな製品を抱えている。今回発表したSAP Emarsys Customer Engagementはマーケティング領域をカバーする製品で、「顧客からの要望もあり、よりBtoCに特化した機能を提供する必要があると感じた。そこでEmarsysとともにCXを強化し、SAP全体としてさらなる価値を届ける」と富田氏。同氏は、SAPが考えるCXについて「マーケティング段階から顧客が商品を購入した後に至るまで、CRM(顧客関係管理)だけでは実現できないカスタマージャーニーの価値を提供すること」と説明、「SAPではエンドツーエンドの仕組みを持っているからこそ、このようなCXが提供できる」と述べた。
SAP Emarsys Customer Engagementの具体的な機能については、SAPジャパン SAP Customer Experience 事業本部 ソリューションエンジニアリング部長の臼谷悠太氏が説明。まずダッシュボードには常にKPI(重要業績評価目標)が表示され、アクティブカスタマーの総数や売上推移のほか、非アクティブな顧客がアクティブへと変換した数、顧客の購入頻度、1回の購入当たりの平均購入額および平均購入個数といった詳細な数値が確認できる様子を示した。
また、SAP Emarsys Customer Engagementには、マーケティングキャンペーンを実行する際のシナリオが事前定義されている。例えば、顧客が興味を持つ商品が入荷するとアラートを送信する、オンラインで購入した顧客にアプリをダウンロードしてもらうことでさらに顧客を囲い込む、位置情報を活用して店舗の近くにいる顧客にパーソナライズした提案を送る、といった具合だ。
「目的に応じた戦術が提案される。戦術を選択し、どのチャネルでアプローチするか決めるだけで、シナリオが出来上がっている」と臼谷氏。通常のマーケティングオートメーション(MA)であれば、KPIを定義してシナリオを作成するまでに数週間から数カ月かかるというが、「Emarsysでは数クリックで実現する」という。
富田氏は「MAを導入している企業はパンデミックでも売り上げが上昇しており、効果が出ていることは間違いない。ただし、MAの導入には外部パートナーが必要だと考えている企業が80%も存在する。自社で実現するには人材が足りないためだ。しかもMAは効果が不明瞭で、重要な施策であるにもかかわらず予算を確保することが難しい」と話す。それが「Emarsysであれば、長時間かかっていたマーケティングプロセスの設計を1日でできるため、人材不足を仕組みでカバーできる。また、圧倒的にROI(投資対効果)にこだわった機能があるため、ROIを追求しながら俊敏性の高いマーケティングが可能だ」としている。
SAPでは、Emarsysを中核としたBtoC向けの戦略を「Commerce Everywhere」としている。これは、購買プロセスやアフターサービスも含めた全てのタッチポイントにおいてデジタルの受付場所を設け、それぞれのタッチポイントから収集したデータを分析して顧客に価値を提供し、企業として戦略を打つ仕組みだ。
Emarsys アジアパシフィック地域担当マネージングディレクターのAdam Ioakim氏は、Emarsysによって「オンラインとオフラインのデータを統合し、データサイロを解消できる。また、オムニチャネルで顧客に応じたパーソナライゼーションを実現し、IT部門やマーケティング担当者の負担が軽減することが可能。価値実現までのスピードも迅速で、カスタマーインサイトも提供する」と述べた。

(左から)SAPジャパン バイスプレジデント SAP Customer Experience 事業本部長 富田裕史氏、SAPジャパン SAP Customer Experience 事業本部 ソリューションエンジニアリング部長 臼谷悠太氏、Emarsys アジアパシフィック地域担当マネージングディレクター Adam Ioakim氏