スポーツ用品大手のアシックスは、2030年に向けてパーソナル、デジタル、サステナブルという3つのキーワードを軸に事業を展開している。2021年3月に発表されたエリートランナー向けのランニングシューズ「METASPEED」シリーズは、それらの要素を取り入れながら設計・開発された。
アシックス スポーツ工学研究所 フューチャークリエーション部 谷口憲彦氏によると、その中でも特に大切にしたのは「パーソナル」という。「これは創業者の鬼塚喜八郎が当時から大切にしてきたもの。選手一人ひとりの言葉に耳を傾け、彼らの希望をしっかり聞きながら、彼らにとってベストなプロダクトを提供するという試みを常に行ってきた。モノづくりの根源は“パーソナライズ”に結び付くと考えている」
アシックス スポーツ工学研究所 フューチャークリエーション部 谷口憲彦氏
METASPEEDはグローバル規模のプロジェクトとして、世界各国のアスリートの声に耳を傾けながら開発が進められた。「彼らが一番に考えるのは“速く走りたい”ということ。そのためにはどうすればいいのかをデータと計算式を使って導き出した」(谷口氏)。走行スピードはストライド(1歩の歩幅)とピッチ(足の回転数)の掛け算で決まる。開発チームは、エリートランナーが自分の走法に最適化されたシューズを履くことで、ストライドの長さとスピードを向上させることができるかどうかに着目した。
調査の結果、エリートランナーの走法を「ストライド」と「ピッチ」に分類。ストライド型のランナーは、速く走るほどストライドが大きくなり、ピッチはほぼ同じ回数で維持され、ピッチ型のランナーは、速く走るほどストライドとピッチの両方が大きく変化していくことが分かった。
「エリートランナーの一人ひとりにベストなプロダクトを提供して、誰もが速く走れるようになってほしいという願いがあった。ランナーのランニングスタイルに合わせてベストなソリューションを提供することが、アシックスにとって最も優先すべきことであり、アスリートファーストの考えだ」(谷口氏)
そうした背景から、METASPEEDシリーズでは、ストライド型ランナー向けの「METASPEED Sky」とピッチ型ランナー向けの「METASPEED Edge」の2種類をラインアップ。それぞれ異なるタイプのランニングスタイルを考慮して科学的に設計された、業界初のランニングシューズだという。