業務スピードも向上--宮崎銀行がビジネスチャットを導入したホントの理由

田中好伸 (編集部) 阿久津良和

2021-07-13 06:45

 地方銀行を取り巻く環境は厳しく、自ら変革を起こさなければ、生き残ってはいけない。2020年4月からスタートした宮崎銀行(宮崎県宮崎市、従業員数1388人、店舗数96店舗)の新中期経営計画では「With Innovation」を掲げている。先端技術を取り込むことで、新たな金融サービスの提供と業務改革を進める施策を内外に打ち出したものだ。宮崎銀行の業務デジタル化で活躍したのが、ビジネスチャット「ChatLuck(チャットラック)」だった。

“堅苦しい”というイメージを払拭したかった

 一般的な銀行のイメージとして読者諸氏は“堅苦しい”印象をお持ちだろう。宮崎銀行も例に漏れず、紙文化を主体として業務プロセスを回しているが、背景には「(銀行業務は)紙で保存せざるを得ないルールがある」(同行経営企画部 IT戦略室 白石丈晴氏)

 政府自身も紙書類を排除できず、リモートワークに至ってはお手盛り調査をするような現状下で、中小企業や地銀の自主的なデジタルトランスフォーメーション(DX)を求めるのは酷な話だ。それでも同行は新たなグループウェアを導入することで、簡易的な業務はペーパーレス化を実現し、「ある業務では年間数万枚を削減」(白石氏)した。法的に紙保存が定められている書類以外はペーパーレス化を推し進めている。

 自ら改革に取り組む宮崎銀行でも“堅苦しい”というイメージは行内にも点在している。白石氏は「そこを変えたい。思いきって行内メールを廃止し、ビジネスチャットに切り替えよう」との判断から、ChatLuckを2019年9月に本部と支店の全拠点・全行員を対象に導入した。

 検討からシステム稼働までは約5カ月で完了。現在の利用率は数字で示すことはできないが、白石氏は「盛り上がっている。グループウェアを導入する理由の1つが、縦横を含めたコミュニケーションの活性化。テーマ別に作成した『ルーム』は業務連絡以外にも、情報交換の場としても使われている。雑談からヒントを得ることもあるため、よい傾向だ」と導入後の2年間を振り返った。

宮崎銀行 経営企画部 IT戦略室 白石丈晴氏
宮崎銀行 経営企画部 IT戦略室 白石丈晴氏

メールvsビジネスチャットと抵抗勢力

 当然ながら「メールで十分」と考える行員は少なくない。人は慣れ親しんだ道具や環境から、未知のものに切り替わることを恐れてしまうのは、昨今のコロナ禍を見ると理解できるだろう。「(メールとビジネスチャットの)両方があってよい」との意見に対しては、行内用メールサーバーの導入や運営のコストの観点から見送り、2カ月程度のメールとビジネスチャットの併走期間を設けた。

 最終的には「ビジネスチャットの利便性を理解してもらうために検討期間を設けて、ボトムアップで導入に至った」(白石氏)

 ただ、メール文化にこだわる意見も否定できない。日本は「CC」「BCC」を使った一種の通達・情報共有の商習慣が根強いからだ。

 しかし、白石氏はメールの欠点を次のように指摘する。

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