AR道案内の「PinnAR」、屋内ナビ対応で多様なマーケティング施策を可能に

大場みのり (編集部)

2021-07-12 12:07

 モバイル通信事業を行うテレコムスクエアは7月9日、AR(拡張現実)を活用した同社のナビゲーションアプリ「PinnAR(ピナー)」の最新動向に関する説明会を開催した。従来の屋外に加えて屋内のルート案内も可能となり、来店客に対してさまざまなマーケティング施策ができるとしている。

 PinnARでは、スマートフォンのカメラ越しに実際の風景が映し出され、目的地を設定するとARでルートが表示される(図1)。ユーザーは、ルートに沿って歩くだけで目的地に到着することができる。日本語のほか、英語、中国語(繁体語、簡体語)、韓国語に対応しており、全世界で約130万ダウンロードされている。

図1(出典:テレコムスクエア)
図1(出典:テレコムスクエア)

 テレコムスクエアは今回、同アプリに屋内のナビゲーション機能を搭載(図2)。従来の地図アプリではGPS(全地球測位システム)でユーザーの現在地を測定するが、屋内ではそれが困難で正確なナビゲーションができていなかったという。同社はPinnARに屋内で利用可能な現在地測位技術を取り入れ、店舗やトイレなど屋内の目的地も案内することを可能にした。同アプリは6月22日から、玉川髙島屋ショッピングセンター(玉川髙島屋S.C)で利用されている。

図2(出典:テレコムスクエア)
図2(出典:テレコムスクエア)

 PinnARは、気になる店舗に立ち寄るなど当初のルートを外れても、自動的にルートを再設定する。加えて、アプリ内で店舗情報やクーポンを提供する機能も搭載している。

 同アプリのメリットについて、デジタルメディア事業部 PinnAR事業責任者の小笠原亮氏は「非接触での案内が可能になるほか、店舗の入れ替わりなどがあった際、デジタルの地図だとすぐに更新することができる」と述べた。

 PinnARは案内だけでなく、ユーザーの行動データを分析して導線を可視化する。顧客企業は、このデータを活用して店舗レイアウトの再検討やイベントの効果検証を行うことができる。

 玉川髙島屋S.Cの運営管理を行う東神開発 代表取締役副社長 営業本部長の宇都宮優子氏は、同アプリを導入した背景について「感染症対策を万全に行うことで、安心してお買い物をしていただきたいということが最大のポイント。また、コロナ禍に伴い都心を避ける傾向があるのか、杉並区や目黒区などに住む方々も玉川髙島屋S.Cを訪れるようになった。その分、館内に関するお問い合わせをこれまで以上に頂くようになり、案内業務の効率化が課題となっていた」と説明した。

 PinnARの開発にはテレコムスクエアのほか、ITを活用したソリューションを提供する SCREENアドバンストシステムソリューションズと、印刷会社の写真化学も参画している。SCREENアドバンストシステムソリューションズは屋内測位システムなどの開発、写真化学はアプリへの地図データ活用を担当している。

 開発時の苦労に関して、テレコムスクエアの小笠原氏は「玉川髙島屋S.Cで何度も実証実験を行ったのだが、フロアの判定が難しかった。例えばエスカレーターで1階から2階へ行った場合、認識に遅れがあり、どうすればお客さまをスムーズに誘導できるかと考えていた。結果的に、お客さまがエスカレーターに乗る前、『フロアを移動してください』という画面をアプリに表示し、目的の階に着いたらボタンを押してもらう形にした」と述べた。

 SCREENアドバンストシステムソリューションズ 第二開発部の山下義男氏は「地下の食料品売り場は通路が入り組んでいるので、現在地を測定しながらルートを表示するのに苦労した」といい、写真化学 メディアカンパニー ジオサイエンス事業部 開発リーダーの坂下尚久氏は「例えば本館3階から南館の6階など、建物とフロアの両方をまたぐ場合、複数の行き方があるため、最短のルートを見つけるのが大変だった」と振り返った。

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