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ガートナー サミット

データ/アナリティクスを成功に導くための鍵とは--ガートナーのハーシェル氏

藤本和彦 (編集部)

2021-07-14 07:00

 7月13、14日にかけてガートナー ジャパンによる「ガートナー データ&アナリティクス サミット」がオンラインで開催された。初日の基調講演には、同社 アナリストでバイスプレジデントのGareth Herschel氏が登壇し、データ/アナリティクスを成功に導くための鍵について考察した。

GartnerのアナリストでバイスプレジデントのGareth Herschel氏
GartnerのアナリストでバイスプレジデントのGareth Herschel氏

 同氏はまず、「データ/アナリティクスは今、経営幹部やCIO(最高情報責任者)にとって最優先事項になっている」とし、コロナ禍のような多くの物事が急速に変化しているときには、その変化を理解し、対応するために役立つ、人材やシステムに投資することが必要だと強調した。「組織の成功にはデータ/アナリティクスが不可欠だからこそ、組織はその成功を求めている」

 では、真の成功に必要なものは何だろうか。Herschel氏は「CEO(最高経営責任者)の関心事に取り組むべき」と説く。例えば、ビジネスモデルの変革や業界変化の早期察知、リソース管理方法の最適化、ステークホルダーとの新たな関係作りなどで、そのための支援だという。

 そしてそのためには、3つのことに集中する必要があるという。1つ目は「単独では何もできないという厳しい現実」、2つ目は「絶え間ない変化に対応しなければならないという新たな課題」、3つ目は「影響力を拡大するための大きな機会」――になる。

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 厳しい現実とは、データ/アナリティクスの実務者だけでは何もできないということだという。営業は取引を成立させ、調達は物資を購入し、物流は製品を配送し、マーケティングは創造性を発揮する。データ/アナリティクスは、彼らを助けることはできるが、代わりにはなれない。

 そこで、組織全体を見渡し、変化を後押ししてくれる協力者を探し出すことが重要になる。Herschel氏は「真の変化とは、テクノロジーの問題ではなく、人やプロセスを変えること」といい、「探すべき協力者は、現状に満足しておらず、古いやり方を止めようと決心しているリーダー」だと語った。

 「重要なのは人であり、組織やグループではない。人が変化を促す。人々の協力を得るには、ビジョンと道筋が認められなくてはならない。共通のビジョンを確立するには、相手の課題を理解し、どのように支援できるかを示す。ここが難しいところだ。時間をかけて最も変化に前向きなリーダーを見極め、古いやり方を捨ててデータ/アナリティクスがもたらす新たな価値を活用するようにリーダーに働きかけよう。組織の求めるビジネス成果を獲得できるよう、リーダーのパートナーとなってサポートしよう」(Herschel氏)

 現在、世の中は大きな変化を目の当たりにしている。Gartnerの調査では、取締役の95%が「デジタルテクノロジーは業界を変革し、データ/アナリティクスはデジタルビジネス戦略の重要な要素である」と回答している。

 ただ、Herschel氏は「テクノロジーの成熟は、それを用いて適切に行動できるかであって、新しいものを使えばいいというものではない」と指摘。ある推計によると、データエンジニアやデータサイエンティストは業務時間の90%をデータの準備作業に費やしている。「そのプロセスの10%でも効率化できれば、付加価値の高い作業の時間を倍増できる。しかし、本来やらなくてもよい作業は、やらずに済むようにすべきで、習熟して上手にできるようになる意味はない」

 だからこそ、機械学習を活用することによって、アナリティクス、データ統合、データ管理など、あらゆる活動を強化することに、大きな関心を集めているのだという。そして、「現時点だけでなく、環境や状況の変化に合わせて価値を提供し続けるために進化し、適応するシステムを考える必要がある」とHerschel氏は話す。

 そのようなシステムには自動化が欠かせず、それを可能にするテクノロジーとして、「データファブリック」「グラフテクノロジー」「敵対的生成ネットワーク(GAN)」「GPT-3」の4つを挙げた。

 「新しいデータソースが利用可能になったら自動的にデータファブリックに統合され、新たなつながりはグラフテクノロジーが見つけてくれる。GANは数千に及ぶ選択肢を作っては試し、最適なものを見つける手助けをしてくれる。GPT-3は組織の言葉の壁を取り払う。こうした適応力のあるシステムの助けを借りれば、ビジネス価値の提供に集中する時間を取り戻せる」(Herschel氏)

 最後は、データ/アナリティクスの影響力を拡大する「機会」について。データ/アナリティクスが確実に使われ、定着するためには、組織のリーダーと協力したトップダウンのアプローチだけでなく、ボトムアップのアプローチも必要になる、とHerschel氏は話す。データ/アナリティクスが使われるようにするには、それが役に立つであろうポイント、すなわち意思決定に焦点を合わせるべきだという。

 「意思決定に影響しないデータは気休めに過ぎない。何を頼りに意思決定をしているのかGartnerが調査を実施したところ、データを第1選択肢としたのは40%で最多だった。40%でも悪くないが、もっと多くの割合に引き上げて、データ/アナリティクスが至る所で活用されるようにすべきだ」(同氏)

 それでは、どうすれば、あらゆる意思決定においてデータが頼られるようになるのだろうか。Herschel氏は「意思決定の自動化」「意思決定の支援」という2つの観点で見直すべきだと説く。

 データ/アナリティクスの領域では、意思決定の自動化が大きな注目を集めている。同氏は「この数年の間に、データ/アナリティクスは他のいかなるシステムよりも速いペースでデジタルビジネスプラットフォームに統合された」といい、その背景には、意思決定の自動化に対する注目度の高さがあり、自動化がさまざまなユースケースを実現していることが挙げられるという。

 例えば、意思決定管理システムの構築によって、複数の意思決定を再構築し、単一のプロセスに統合することで、住宅ローンの承認といった複雑な意思決定であっても自動化できるようになるという。また、人工知能(AI)は自動運転車のような新しく革新的な意思決定の能力ばかりでなく、不正検知のようにルールや予測モデルによって既に自動化されていた意思決定の精度向上にも貢献する。

 「データ/アナリティクスの実務者たちは、何が自動化できるのかをビジネスユーザーに教えられるが、それを自動化すべきか、人間に任せておくべきかは、ガバナンスモデルで適切に判断しなければならない。意思決定の自動化には、大きな潜在能力があるが、その大半は人間に任されたままとなるだろう」とHerschel氏は語る。

 意思決定の支援について、Herschel氏は「私は数年前まで、データ/アナリティクスで重要なものはデータあるいはアナリティクスであると信じていたが、あまりに未熟で経験も浅かった」と自身を振り返る。その上で、データ/アナリティクスで重要なのは、組織のスタッフ、リーダー、顧客の行動を理解し、変化を促す「行動科学」だと指摘する。

 単にデータ/アナリティクスを活用するよう口頭で促すだけではうまくいかず、データリテラシーを身に着けられるよう訓練するだけでも不十分だという。また、データ分析基盤を構築すれば活用されると期待するのも誤りだとする。

 データ/アナリティクスの活用を習慣化をするには、「あらゆる意思決定のプロセスにアナリティクスを組み込むよう努力して活用の場を広げること」「知りたかったことを教えてもらうこと」「キーパーソンに目で見える形でデータを使ってもらうこと」が必要だとHerschel氏。組織全体で成功体験を共有し、ある領域の成功を、他の領域にも知らせることも重要になる。

 「統合された複雑な意思決定も、AIの力で自動化された意思決定も、人の手によって進められる意思決定のプロセスであっても、あらゆる意思決定にアナリティクスを組み込むことで、データ/アナリティクスの協力を拡大する機会が得られる」

 最後に、Herschel氏は「データ/アナリティクスの習慣化を促すには、行動科学から教訓を学ばなければならない。組織の幹部は、データ/アナリティクスがゲームチェンジャーであることを理解している。私たちはデータ/アナリティクスについて、個人として組織として、それぞれが異なる成熟段階にいるため、それに応じて、取るべき行動や投資も異なる。しかし、こうした行動や投資において、ここで紹介した3つの柱は変わることがない」とまとめた。

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