DXで重要なビジネスプロセスを整理する「60:30:10フレームワーク」とは

石田雅久 (インフォアジャパン)

2021-07-19 06:45

 前回は、従来型の統合基幹業務システム(ERP)を再考すべき理由と、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する基盤となり得る「ポストモダンERP」の必要性について説明した。

 後編となる今回は、DXの重要な側面である「差別化」と「自動化」の実現に向けて、ビジネスプロセスを整理して適切にERPを実装するためのアプローチ方法について解説する。

重要なのは「自動化」と「差別化」

 現在これだけDXの推進がうたわれている中で、企業は実際にどのようなメリットをDXにより得られているのだろうか。米コンサルティング会社の調査によると、過去2年間に実施したテクノロジー変革による影響について、新たなビジネスや既存のビジネスの収益においても、コスト削減においても、ほとんどの企業が投資を上回るリターンを得ているという回答が得られている。

 一方、日本の現状を見ると、複数のコンサルティング会社が、デジタル化は加速しているものの、まだまだ他国と比べてデジタル関連の投資では後れを取っていると警告している。前編でも触れたが、日本企業の多くはいまだに従来型のERPを改良することに投資の重きを置いている。

 しかし、これからは、変化するビジネスモデルに柔軟に対応できるERPやテクノロジーへの投資を再考すべきだ。それに加えて、ビジネスプロセス自体もDXにあわせて整理する必要がある。

 ビジネスプロセスを考える上で鍵となるのが、DXの重要な側面となる「差別化」と「自動化」だ。

 自動化とは、既存のビジネスプロセスをデジタル化することで効率化や効果の最大化を図ることだ。例えば、見積もりから注文のプロセスが顧客の設定に応じて自動最適化されたり、サプライチェーンにおいてはバーコードやRFIDにより現場生産性が大幅に向上したり、IoT(スマート製品)や人工知能(AI)の活用により設備のダウンタイムを限りなくゼロにして維持したりできる。

 DXでは可能な範囲でプロセスを自動化し、効率化を図って余力を生み出した上で、もうひとつの重要要素である差別化に取り組むべきだ。

 差別化とは、ビジネスのアプローチを再考し、競合他社より優れた高度な顧客体験や製品が提供できるようにすることだ。データに基づき、収益性のある新しいサービスを生み出せないか、既存のサービスをサブスクリプションで提供できないか、支払いモデルやサポート内容をカスタマーにあわせて最適化できないかなど、さまざまな観点から自社の競争力を高めるための検討を行う。

 例えば、自動車業界で採用が進む「テレマティクス」と、利用者の運転状況によって保険料を決定する自動車保険サービスを組み合わせた「テレマティクス保険」は、少し前は最先端のものだったが、今や自動車保険としては当たり前のものになりつつある。

 成功したビジネスも、常にバージョンアップしていかないと競合には勝てない。すぐに模倣されて追い付かれる可能性があるのもデジタル化の怖い部分である。

ポストモダンERPに有効な「60:30:10」アプローチ

 このような自動化と差別化をERPやテクノロジーにより推し進める前段階として紹介したい手法が、ビジネスプロセスを整理する「60:30:10プロセスフレームワーク」だ。

 そもそも、各企業の業務におけるビジネスプロセスの位置付けは同一ではなく、自動化により効率化を目指すプロセスと、差別化によりビジネスの変革を促すプロセスは異なる。そして、ERPの実装においては、これらのプロセスを事前に整理し、それぞれのプロセスに適した導入のアプローチをとることが重要だ。

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