パナソニックは7月19日、サプライチェーンにおける物流と流通での現場業務プロセスの改善を支援するSaaS型アプリケーション群「現場最適化ソリューション」の提供を発表した。2030年時点で利益率に占めるリカーリングビジネスの割合を60%に引き上げるとも表明した。
現場最適化ソリューションは、業務プロセスの実態の可視化などを担う「可視化アプリケーション群」と標準的な業務プロセスに合わせていく「最適化アプリケーション群」で構成される。物流業務向けには可視化アプリケーション群で4種類、最適化アプリケーション群で3種類、流通業務向けに可視化アプリケーション群で5種類、最適化アプリケーション群で3種類をラインアップしている。
「現場最適化ソリューション」の物流業務向け機能メニュー
「現場最適化ソリューション」の流通業務向け機能メニュー
同日記者会見したパナソニック コネクティッドソリューションズ社 上席副社長 兼 パナソニック システムソリューションズ ジャパン 代表取締役社長の片倉達夫氏は、新型コロナウイルス感染症の大流行が続く中で世界のサプライチェーンが混乱しており、この状況への対応が求められていると指摘。今回のソリューションは、カメラによる物体認識といったセンシング技術およびデータ分析を通じた可視化技術などと、電機メーカーとしての100年以上の経験を組み合わせて提供するとした。
パナソニック コネクティッドソリューションズ社 上席副社長 兼 パナソニック システムソリューションズ ジャパン 代表取締役社長の片倉達夫氏
片倉氏は、日本の製造業の現場業務の課題は、業務の知識や経験則などが暗黙知となっており、最適化も業務ごとに個別で行われていることだという。これらは人に依存しており、誰もができるわけでないため、コロナ禍のような急激な変化への対応が難しく、事業の停滞や中断といった事態に至りかねない。
そのため業務内容とプロセスを標準化して誰でも実践できるようにする必要があるという。今回のソリューションでは、人に依存している業務内容をセンサーなどによりデジタルデータとして取得し、同社のエキスパートの知見を取り入れたデータアナリティクス技術でグラフを交えたダッシュボードに可視化する。可視化した結果を踏まえて、業務内容とプロセスを標準化し、それを現場で実践し、定着させていく流れになる。
同社自体の取り組みでは、8万品番以上の部品を世界中に出荷している彩都パーツセンター(大阪府茨木市)で、分析工数の時間を2016年の約10時間から30分に短縮したとのこと。グループ会社のパナソニック物流 電材厚木物流センター(神奈川県厚木市)では、ピッキング業務が人の作業に比べて1.5倍多く処理できるようになった。
現場最適化ソリューションは、同社が推進する「現場プロセスイノベーション」事業のリカーリングビジネスにおける重点商材で、片倉氏はリカーリングビジネスの比率を、販売面では2021年の20%から2030年は30%に、利益面では40%から60%に引き上げると表明。国内での事業推進体制を約3000人に増強すると説明した。
また同社は、近年にサプライチェーン管理ソフトウェアのBlue Yonderと協業しており、4月にはBlue Yonderの全株式を取得すると発表。2021年度第3四半期の買収完了を予定している。
会見でパナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務 兼 パナソニック システムソリューションズ ジャパン 取締役 執行役員副社長の山中雅恵氏は、Blue Yonderのソリューションがサプライチェーン全体を管理し、今回の「現場最適化ソリューション」がサプライチェーンの個々の業務を最適化するとの位置付けを説明。Blue Yonderの買収完了後は、サプライチェーン全体を網羅するデジタルトランスフォーメーション(DX)実現のソリューションになるとの方向性を示した。
現場最適化ソリューションとBlue Yonderのソリューションとの関係