海外コメンタリー

NASAのハッブル宇宙望遠鏡、障害による停止から再稼働までの道のり

Daphne Leprince-Ringuet (ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2021-07-22 08:30

 地球の上空600km近くの衛星軌道上を周回し、宇宙観測を実施している米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡(HST)は、コンピューター障害の原因究明に難航し、その運用を停止していた。しかし、1カ月におよぶ停止期間の後、同望遠鏡は宇宙観測作業を再開する準備が整ったようだ。

この1カ月間、ハッブル宇宙望遠鏡の運用は停止され、観測データの取得作業も実施されていなかった
この1カ月間、ハッブル宇宙望遠鏡の運用は停止され、観測データの取得作業も実施されていなかった。
提供:米航空宇宙局(NASA)/宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)

 NASAはHSTが再起動し、同望遠鏡に搭載されているすべての科学観測機器が稼働するとともに、地上のリサーチャーらのためのデータ収集に向けた準備が整ったことを確認した。

 いくつかの観測機器を最終的に較正した後、HSTは7月19日の週末から、重要なハードウェアの故障以来1カ月にわたって停止していた宇宙観測を再開する予定だ。

 障害の発端は6月13日に発生した、ペイロードコンピューターのフリーズだ。ペイロードコンピューターは、Science Instrument Command and Data Handling(SI C&DH:観測機器に対する司令及びデータ取り扱い)モジュールと呼ばれる、HSTの観測システムすべてを同期させるユニット内に装備されており、観測データとエンジニアリングデータを地上に送信するための中心的な役割を担っている。

 この障害により、SI C&DHはHSTに搭載されているすべての観測機器をセーフモードに移行した。その結果、エンジニアらが問題の原因を特定するまで、あらゆるデータの収集と処理が停止することになった。

 HSTチームが地上から原因を特定するには、しばらく時間がかかった。宇宙飛行士が搭乗していない宇宙望遠鏡に搭載されているシステムを遠隔地からテストするには、ある種の推理を交えた試行錯誤が必要だった。例えば、ペイロードコンピューターの再起動では問題を解決できそうになく、ハードウェアの故障箇所を特定するのは言うほど簡単ではなさそうだということがすぐに分かった。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  2. セキュリティ

    マンガでわかる脆弱性“診断”と脆弱性“管理”の違い--セキュリティ体制の強化に脆弱性管理ツールの活用

  3. セキュリティ

    情報セキュリティに対する懸念を解消、「ISMS認証」取得の検討から審査当日までのTo Doリスト

  4. セキュリティ

    ISMSとPマークは何が違うのか--第三者認証取得を目指す企業が最初に理解すべきこと

  5. セキュリティ

    クラウドセキュリティ管理導入による投資収益率(ROI)は264%--米フォレスター調査レポート

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]