地球の上空600km近くの衛星軌道上を周回し、宇宙観測を実施している米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡(HST)は、コンピューター障害の原因究明に難航し、その運用を停止していた。しかし、1カ月におよぶ停止期間の後、同望遠鏡は宇宙観測作業を再開する準備が整ったようだ。
この1カ月間、ハッブル宇宙望遠鏡の運用は停止され、観測データの取得作業も実施されていなかった。
提供:米航空宇宙局(NASA)/宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)
NASAはHSTが再起動し、同望遠鏡に搭載されているすべての科学観測機器が稼働するとともに、地上のリサーチャーらのためのデータ収集に向けた準備が整ったことを確認した。
いくつかの観測機器を最終的に較正した後、HSTは7月19日の週末から、重要なハードウェアの故障以来1カ月にわたって停止していた宇宙観測を再開する予定だ。
障害の発端は6月13日に発生した、ペイロードコンピューターのフリーズだ。ペイロードコンピューターは、Science Instrument Command and Data Handling(SI C&DH:観測機器に対する司令及びデータ取り扱い)モジュールと呼ばれる、HSTの観測システムすべてを同期させるユニット内に装備されており、観測データとエンジニアリングデータを地上に送信するための中心的な役割を担っている。
この障害により、SI C&DHはHSTに搭載されているすべての観測機器をセーフモードに移行した。その結果、エンジニアらが問題の原因を特定するまで、あらゆるデータの収集と処理が停止することになった。
HSTチームが地上から原因を特定するには、しばらく時間がかかった。宇宙飛行士が搭乗していない宇宙望遠鏡に搭載されているシステムを遠隔地からテストするには、ある種の推理を交えた試行錯誤が必要だった。例えば、ペイロードコンピューターの再起動では問題を解決できそうになく、ハードウェアの故障箇所を特定するのは言うほど簡単ではなさそうだということがすぐに分かった。