英国の中央銀行であるイングランド銀行の幹部は、銀行のクラウドコンピューティングに対する依存が金融の安定性に悪影響を及ぼす可能性があり、より厳格な監督が必要だと発言した。

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同銀行は、過去数カ月間の英国における金融安定性に焦点を当てた報告書で、金融機関でパブリッククラウドサービスの導入が進んでいることに注目し、それらのサービスを提供している事業者が市場支配力が高い少数の大企業に集中していることに懸念を表明した。
イングランド銀行は、銀行業務に関する重要なデータやサービスを少数のクラウドサービス事業者にアウトソースすることは、それらの事業者に有利な契約条件を要求する交渉力を与えることにつながり、金融システムの安全性が犠牲になる可能性があると指摘している。
例えばクラウド事業者は、システムの内部構造を第三者に知らせないよう、情報を開示しないかもしれず、顧客が銀行業務に必要な水準の耐障害性が保証されているかどうかを確認できないかもしれない。
イングランド銀行の総裁Andrew Bailey氏は、記者会見で「規制当局や国民は金融安定性に関心を持っており、クラウドサービス事業者がシステムに不可欠なものになるにつれて、私たちが必要としている水準の耐障害性をそれらの事業者が備えているかどうかを保証することが一層必要になる」と述べた。
この数年、金融機関はクラウドサービス事業者に対する依存を強める計画を進めてきた。銀行は、ファイル共有や不正行為の検出から業務管理やコミュニケーションに至るまで、ソフトウェアの実行や処理能力の調達と、ITインフラの維持の両面でクラウドへのアウトソーシングを活用してきた。
クラウドサービスは最近まで、主に銀行の周辺業務で使われるアプリケーション(例えば人事システムなど)を実行するために使われており、これらのシステムは金融サービスに直接影響を与えるものではなかった。しかしイングランド銀行によれば、その状況は変化しつつあり、クラウド事業者が銀行の中核業務に不可欠な業務の処理を担うようになっている。
英国の健全性規制機構で最高経営責任者を務めるSam Woods氏は、「クラウドにどの種類のシステムをアウトソースし、どれだけの量のシステムとデータをアウトソースするかという観点から見ると、私たちはすでに一線を越えてしまっている」と述べている。「ご想像の通り、私たちはこの問題を注意深く監視している」