社会のDXに大きく影響する損保ビッグデータの活用
以上が発表の概要だが、今回この両社の動きを取り上げたのは、今後DXに向けてデータの活用が重視される中で、筆者はかねて東京海上HDに代表される損害保険大手が保有するビッグデータをどう生かすかが、社会全体のDXにおいても大きな影響力があると考えていたからだ。その点、企業の経営データ活用を支えるSAPジャパンとの協業は、社会のDXを進展させるインパクトの大きい動きだと捉えることができよう。
両社は今回の協業の背景について、以下のように説明している。
社会環境が大きく変化する中、企業が顧客や社会に価値を提供し続けていくためには、経営課題を可視化するとともに新たなリスクに対応していくことが重要となる。多岐にわたる課題を可視化し解決につなげていく上で、データやデジタルの活用は不可欠となっているが、特に中小企業においては多額のシステム投資が難しいケースや専門人材が不足するケースもあり、経営課題解決の一つのハードルとなっている。
中堅、中小製造業が抱える経営課題やリスクに対して、東京海上グループでは保険商品やリスクコンサルティングなどを提供し、事業活動を支援してきた。また、2021年7月1日にはグループのデータ戦略の中核機能を担う「東京海上ディーアール」を立ち上げ、企業が抱える多様なリスクに対してデータを活用した新たなサービスの開発を進めている。
一方、SAPジャパンは同社が網羅している25の業界ごとの企業ニーズにきめ細かく対応するために、「SAP Business Technology Platform」を基盤とした業界特化型の「イノベーションのためのソリューション」であるIndustry Cloudソリューションを推進している。Industry Cloudでは顧客企業がすぐに利用できる統合済みソリューションを提供することを目指し、各業界の顧客企業やパートナーとの協業を通じて展開を進めている。
以上が、両社による協業の背景の説明だが、今後こうした形で損保会社とITベンダーの大手同士が協業する動きが活発化してくるだろう。とりわけ、損保大手のビッグデータが今後どのように使われていくか。社会のDXとともに、セキュリティやプライバシー保護といったデジタルリスクの観点からも注目していきたい。