本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、アカマイ・テクノロジーズ 職務執行者社長の山野修氏と、ナイスジャパン 社長の安藤竜一氏の発言を紹介する。
「これまでのネットワークやセキュリティモデルは時代遅れになる」
(アカマイ・テクノロジーズ 職務執行者社長の山野修氏)
アカマイ・テクノロジーズ 職務執行者社長の山野修氏
アカマイ・テクノロジーズは先頃、プライベートイベント「Akamai Security Summit Japan」をオンラインで開催した。山野氏の冒頭の発言はそのイベントの主催者としての挨拶とスピーチの中で、今後のネットワークやセキュリティモデルの変化について述べたものである。
山野氏はまず、Gartnerのメッセージを引用して次のように語った。
「デジタル変革と、モバイル、クラウド、エッジに関する展開モデルの導入によって、ネットワーク・トラフィック・パターンは根本的に変化しており、既存のネットワークやセキュリティモデルは時代遅れになるだろう」
このメッセージの中でも同氏がとりわけ注目すべきだと強調したのが、「既存のネットワークやセキュリティモデルは時代遅れになる」という最後のフレーズだ。その上で、「私たちは長年にわたってアプリケーションと関連するパフォーマンスやセキュリティのスタックを社内のサーバーやデータセンターに実装してきたが、それが今、デジタル変革によって全てクラウドへと移行しつつある」と述べた。
では、そうした変化に対応するための解決策はクラウドなのか。山野氏は「クラウドが全ての解決策ではない」と否定し、その理由として「ユーザーはあらゆる場所からアクセスする」「脅威が至る所に存在する」「アプリケーションも至る所に存在する」といった3点を挙げた。
そして同氏は、「この3つの現象が起こっている中で、大きな疑問が浮かび上がってくる。それは、異なる場所にあるアプリケーションに対してパフォーマンスやセキュリティのスタックを複製して実装できるのかという疑問だ。その答えは明らかにノーだ」と説明した。ならば、どうすればよいのか。
「クラウドなどにあるパフォーマンスやセキュリティのスタックを数あるアプリケーションに対して複製できなければ、トラフィックをバックホールするしかない。しかし、トラフィックをバックホールすればパフォーマンスは低下するし、コストもかかるので、できればそれは避けたいところだ」(図1)
図1:トラフィックをバックホールすればパフォーマンスは低下する(出典:Akamai Security Summit Japan)
こう話した山野氏が、その解決策として挙げたキーワードが「エッジ」である。
「トラフィックをバックホールするのではなく、ユーザー、アプリケーション、そして脅威の近くに分散配置されているエッジへ、パフォーマンスやセキュリティのスタックを移すというのが、私たちの考え方だ」(図2)
図2:解決策はエッジ(出典:Akamai Security Summit Japan)
Akamaiは世界135カ国に34万台超のサーバーを分散配置し、相互接続することで、世界最大級のエッジプラットフォームを構成しており、この仕組みを生かせるというわけだ。果たして、山野氏の予見通りになるか。非常に重要な問題だけに、今後の動向を注視していきたい。