イタリアのソリューションベンダーLARUS Business Automation(LARUS)は、富士通の人工知能(AI)スコアリングプラットフォームサービス「FUJITSU Finplex AIスコアリングプラットフォームサービスEnsemBiz(Finplex EnsemBiz)」をLARUSのグラフXAI(説明可能なAI)サービスに組み込む。Finplex EnsemBizは、富士通のグラフ構造データを分析するAI「Deep Tensor」に機能を追加したもの。
グラフ構造データは、従来のリレーショナルデータと異なり、多様で構造が複雑なデータをネットワークの形で表現できる。Deep Tensorは自動でより効率的にグラフ構造データ間の関係性を分析/活用できるため、これまで難しかった循環取引をはじめとする不正取引の検知などが可能となる。
Finplex EnsemBizは、主に金融機関向けにAIの予測根拠と次のアクションを示すことで、ローン審査の効率化や不正請求検知などを行うサービス。
LARUSのグラフデータベースプラットフォームに、富士通のFinplex EnsemBizを組み合わせることで、従来できなかったグラフ構造データに対する精度の高い分析が可能となる。これにより、金融機関において、循環取引など高度かつ複雑な不正取引の自動検知が可能となり、金融機関のリスク低減やコスト削減に貢献できる。
LARUSは新サービス「Galileo XAI」として8月から金融業界に向けて提供し、富士通は日本市場に向けて本サービスの導入支援を行う。
両社は、2020年1月からクレジットカードの不正利用や自動車保険の不正請求のPoC(概念実証)を行っており、検知率向上や誤検知率低下の検証結果を得ることができたという。
クレジットカードの不正利用についてのPoCでは、イタリアのクレジットカードの決済サービス会社Nexi Paymentsのデータを活用し、循環取引を含めた不正検知について実証。従来の人手で定義したルールベースを使った手法より、不正検知率を72%から89%に向上させ、誤検知率を63%削減する結果を得られた。
自動車保険の不正請求についてのPoCでは、イタリアの自動車保険会社のデータを使い、保険の不正申請の検知について実証した。人手で定義したルールベースを使った手法より、検知率を18%から81%に向上させ、誤検知率を82%から19%に削減する結果を得られた。
今後LARUSは、Galileo XAIを金融業界だけでなく、政府、教育、製造、製薬などの各業界へも展開する。富士通は、Galileo XAIを通して日本の金融機関における不正取引の検知率向上に貢献する。また、Finplex EnsemBizの業務テンプレートを充実させ、オルタナティブレンディングなど適用領域の拡大を進める。