日本で大型データセンター合弁事業を展開--三井物産とフィデリティ

國谷武史 (編集部)

2021-08-13 07:00

 三井物産グループと金融のFidelityグループが日本で大型データセンター(ハイパースケールデータセンター)の合弁事業を展開する。Fidelity傘下でデータセンターを運営するColt Data Centre Services(Colt CDS) グローバルアカウント&ソリューション担当バイスプレジデントのQuy Nguyen氏は、「日本市場で今後3~5年に3倍の事業の成長を計画しており、パートナーとの戦略が重要になる」と話す。

Colt Data Center Services グローバルアカウント&ソリューション担当バイスプレジデントのQuy Nguyen氏
Colt Data Center Services グローバルアカウント&ソリューション担当バイスプレジデントのQuy Nguyen氏

 この取り組みでは、三井物産グループの三井物産アセットマネジメント・ホールディングスがカナダのCanada Pension Plan Investment Boardと、7月に日本での先進的なハイパースケールデータセンターの開発を対象とするファンドを設立。合弁事業はこのファンドの第1号案件になる。合弁事業では、データセンター事業運営会社と資産保有会社を50:50の保有割合で設立し、データセンターの開発や運営をColt CDS、資金調達や開発用地などの管理・運営を三井物産リアルティ・マネジメントが担当する。

 合弁事業がターゲットとするハイパースケールデータセンターは、世界的なクラウドサービスプロバイダーや大企業などを顧客として、彼らのITサービス提供インフラを担う。Colt CDSは、日本におけるハイパースケールデータセンターとして2020年11月に、千葉県で供給電力量27メガワットの「印西3」を開設した。ハイパースケールデータセンターで現在求められる供給電力量は50~100メガワットとされ、今後は継続的に増えていくと見られる。Nguyen氏によれば、合弁事業ではまず140~150メガワットを提供していくという。

 パートナーシップについてNguyen氏は、「三井物産グループは、データセンター用地の確保をはじめとして、この事業に必要なノウハウや人材などのリソースと、データセンターを利用する多くの大企業顧客を抱えており、FidelityおよびColt CDSとのすばらしいシナジーが期待できる」と話す。

 また、三井物産 コーポレートディベロップメント本部 金融事業部長の和歌伸介氏は、報道発表の中で、「データセンターは世界中で進むビジネスのデジタルトランスフォーメーションにおいて重要な役割を果たしており、高品質で環境に配慮したハイパースケールデータセンターの需要は非常に大きいもの。合弁事業の運営を通じて、三井物産グループの総合力を発揮し、グローバルパートナーと共同でこれらのニーズに対応していく」とコメントしている。

 Colt CDSは、首都圏では千葉県印西市を中心にハイパースケールデータセンターを増やしていく方針といい、関西圏では、8月に「京阪奈データセンター」(当初の供給電力量は40メガワット)の建設に着工した。両エリアで2020年代前半に複数のハイパースケールデータセンターを稼働させたい考えだ。「首都圏はクラウドサービスプロバイダーの利用が中心となるが、関西圏はクラウドサービスプロバイダーだけでなく多数の大企業の利用も見込んでいる」(Nguyen氏)

2021年8月に着工するという「京阪奈データセンター」
2021年8月に着工するという「京阪奈データセンター」

 Nguyen氏によれば、国内データセンターの利用ニーズは極めて高く、平均してデータセンター稼働前に供給電力容量の80%が売れており、印西3では94%に上るなど、今後もデータセンターを増やして需要に対応しなければならない状況だという。

 一方で、データセンターの電力消費が地球温暖化に与える影響が無視できない状況も生じている。Nguyen氏は、「データセンターは欧州、インド、日本にあり、欧州では100%再生可能エネルギーで電力をまかなえるが日本ではまだ難しい。電気自動車に切り替える、出張を減らす、データセンターを長寿命で設計して全体的な廃棄物の量を減らすといったさまざまな方法で二酸化炭素の排出を抑制していく」と話している。

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