デジタルマーケティング業務におけるガバナンス--統制された業務の確立に向けて

なぜデジタルマーケティング業務にガバナンスが必要なのか

里泰志、小倉英一郎 (クニエ)

2021-08-16 07:00

はじめに

 デジタルマーケティングに取り組む企業が増えている。デジタルマーケティングツールが日本に紹介された当初は、海外の先進事例にキャッチアップしたい企業や、マーケティング機能が強い企業などがアーリーアダプター的に取り組むだけであったが、続けてやってきたデジタルトランスフォーメーション(DX)による企業変革の波に乗る形で、デジタルマーケティングはさまざまな企業のDXのテーマとして取り上げられるようになった。

 また、携帯電話やタブレットといったデジタルデバイスや常時接続可能な4G(第4世代移動体通信)の普及により、消費者はオンラインとオフラインの区別なく企業サービスや製品情報にアクセスできるようになった。これにより顧客行動はこれまでになく多様化/複雑化し、企業はさまざまなデジタル接点から顧客の行動をサポートしていく必要に迫られている。このような変化により、企業は守りではなく攻めのIT戦略として積極的にデジタルマーケティング活動に取り組むようになっている。

 だが、デジタルマーケティングに取り組む企業は知らず知らずのうちに、さまざまなリスクを抱えていることが多い。このようなリスクへの対策としてデジタルマーケティング活動にガバナンスを導入することが有効であるが、デジタルマーケティングとガバナンスの関係や効果については十分に認知されていないのが現状である。本連載では企業のデジタルマーケティング活動におけるリスクとガバナンスの関係、ガバナンス導入の方法や効果について5回に分けて解説する。

企業のデジタルマーケティング活動の特徴

 まず、デジタルマーケティング固有のリスクを引き起こす要因となっている、デジタルマーケティングを実現するためのサービスやツール、業務の特徴について説明する。

SaaS中心

 デジタルマーケティングで用いられるツールはSaaSで提供されることが一般的である。これは、デジタルマーケティングがウェブやインターネットの技術を用いて実現されているため、SaaSがサービス提供形態として最も簡便かつ合理的であるためである。また、ウェブやインターネットの技術は変化が早いため、バージョンアップを強制できるSaaSの方がオンプレミスよりサポートが容易であることも大きな理由である。

多様なツールの組み合わせ

 近年はオールインワンの重厚長大なSaaSも登場しつつあるが、単機能の小さなツールがひしめき合っているのがデジタルマーケティングツール業界の特徴である。毎年ツール数は増加の一途をたどっており、国内だけでも数百のツールが存在する。企業はそれらのツールを目的に応じて選定し、インテグレーションしてデジタルマーケティング業務の立ち上げを行う。

企画を外部が持つ

 デジタルマーケティングではただシステムを構築だけではなく、システムを用いて行われるマーケティング活動の質こそが非常に重要である。日々発信する情報、日々行う顧客とのコミュニケーションが企業のデジタルマーケティング活動の成否を左右するが、事業会社がコンテンツやクリエイティブ、顧客コミュニケーションに関する知見を持っていることは少なく、一般的にはデジタルマーケティングシステムの構築と合わせてコンテンツの企画や制作を外部にお任せすることが多い。

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