NTTデータの新サービスにみる「防災のDX」の中身とは - (page 2)

松岡功

2021-08-19 07:00

求められる防災全体の在り方を変革していくためのアプローチ

 以上が発表の概要だが、今回このサービスを取り上げたのは、これこそが「防災のデジタルトランスフォーメーション(DX)」と感じたからだ。DXと表現したのは、特定の作業部分のデジタル化にととまらず、防災全体の在り方を変革していくためのアプローチが求められると考えたからである。

 NTTデータによると、今回の新サービスを提供した背景としては、台風や大雨などの自然災害が近年になって頻発化、激甚化していることが挙げられる。今年に入っても熱海市の土砂災害をはじめ、全国各地での集中豪雨など災害が続いている。また、自然災害に加えて新型コロナウイルス感染症など国民の安全、安心を脅かす脅威は多様化しており、コロナ禍での避難所運営といった災害が複合化した場合への対応も求められるようになってきている。

 現行の災害対策業務において効率化余地のある業務と、近年の災害広域化、複合化への対応で求められる対策は、次のような点が挙げられる。

 効率化余地のある災害対策業務の例としては、「自治体が被害情報を電話やファクスなど非デジタルな形式で収集、集約する」「収集、集約した被害情報がExcelなどのデジタルデータの場合であっても、被害内容とその発生場所が連携したデータになっていないため、すぐに全体での集計や地図表示できない」「罹災証明を発行するため、浸水などの被害後、家を1軒1軒調査員が回って被害認定を行う」「被害状況の把握のため、同じエリアに対して異なる組織の管理者が別々に調査を実施する」といった点が挙げられる。

 また、災害の広域化、複合化で求められる対策の例としては、「大雨や土砂災害の場合、流域全体の自治体の連携や土木部門と医療部門の連携といった組織を超えた連携」「コロナ禍の避難所運営のような場合には保健、衛生系の組織と防災や土木系の組織が連携」「市区町村間の横連携だけでなく、県や国といったより上位へのエスカレーション、上位組織が判断」といった点が挙げられる。

 D-Resilioは上記のような事例に対応できるデジタル防災プラットフォームだというのが、NTTデータの訴求ポイントである。

 同社は今後について、「行政の動向を踏まえ、システムやデータの標準化、共通化に積極的に取り組み、防災業務のデジタル化や情報連携を推進していきたい。また、現在は発災前後の災害対策本部向けの支援を中心としているが、今後は災害前の事前、予防対策や災害後の復旧、復興なども含め、D-Resilioのソリューションラインアップを継続的に拡充して日本の防災事業を支援し、安全、安心な社会づくりに貢献していきたい」と述べている。

 災害の多い日本にとって、防災のDXは急務だ。NTTデータが行政とともに先頭に立って、この取り組みで日本ならではのエコシステムを構築していってもらいたい。

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