町工場が続ける25年のデジタル化--FileMakerで内製する基幹システム - (page 2)

石田仁志 藤代格 (編集部)

2021-08-25 07:15

iPadで図面を見ながら顧客とやり取り

 ワークキャムが四半世紀にわたって粛々とデジタル化を進めていったなかで、ひとつの転機となったのが「iPhone」と「iPad」の導入であったという。製造作業の現場にiPadを導入したことで、1日2回の印刷作業も無くなり、FileMakerのデータをもとにリアルタイムで進捗状況や作業の流れを把握できるようになった。また、「以前使っていたWindowsのノートPCと比べて作業で発生する粉塵に対する耐久性が大幅に向上し、装置としてのコストも大幅に削減できた」(飛田氏)としている。

iPadを現場で活用
iPadを現場で活用

 他にも、製造した型をiPhoneやiPadで撮影してFileMakerに記録し、作成した図面や3Dモデルなどと併せて「デジタルデータの資産管理を効率的に行えるようになった」(飛田氏)という。これによって、内部のみならず営業活動も高度化した。

 営業1部で係長を務める岩崎真道氏は、「客先で3Dの動画や図面のデータをiPadで表示しながら顧客とやり取りをしている。画面を見せて打ち合わせをしながら、工程の進み具合の確認や、受けた仕事にどれくらい費用が掛かっているかもその場でわかるので、商談に非常に便利。マシンの稼働状況や進捗状況を把握して、営業担当者がその場で即答できる」と説明する。

自分たちで作り続けるさまざまなメリット

 ワークキャムでは時代に合わせたデジタルツールをうまく取り入れつつ業務の高度化を進めてきたが、創業時は野崎社長自身が開発を担当していたという。その後プログラマーの飛田氏が入社して19年間FileMakerの開発と保守を担当し、現在に至っている。すべてのアプリケーション開発はワークキャムの社内で、昨今の言葉を使えば内製でおこなっている。コスト面は言うまでもなく、自らの業務にあった最適なアプリケーションやワークフローを自らの手で開発し続けた蓄積が自社にもたらす恩恵は計りしれない。

 同社ではシステムを小さく生んで、必要に応じて大きく育ててきた。そのため、業務の変更や拡大にあたっても、他社のように外部のITベンダーやディストリビューターに見積もりを出してもらい、開発を委託し、使い方を覚えるなどということをしなくても済んでいる。理解できぬまま身の丈に合わないシステムを“買わされる”こともない。また昨今のモバイル対応も、自社業務の最適化を図るという自然な文脈の中で実現できている。

 「システムを使いこなしていくなかで発想が出てくる。iPadにしても現場で利用しても壊れないという理由で入れて、その後色々と使えることが分かってきた。当社では導入しているシステムは稼働することが前提だが、取引先からは、何億円というシステムを入れているのに全然稼働していない、という話も聞く」(飛田氏)

 また、業務拡大の過程でフィルム印刷機や3Dプリンターなどの新しい工場設備を導入してきたが、FileMakerベースの基幹業務システムが構築されているため、そのような事業拡大にあたってもシステム上の新たな投資はゼロで済んでいると野崎氏はいう。

 今後の事業環境の変化についても、5Gの普及やアフターコロナも業務環境も踏まえ、「コロナ禍でウェブ会議となったお客様との打ち合わせや、お客様がサンプルの成形具合を確認する“立ち会い”の様子などをFileMakerの中に取り込んで記録できるようにするなど、打ち合わせ自体とデータ管理をニューノーマルな働き方に合わせた形に高度化していきたい」(野崎氏)としている。

(左から)ワークキャム 代表取締役 野崎氏、管理部 飛田氏、営業1部 係長 岩崎氏
(左から)ワークキャム 代表取締役 野崎氏、管理部 飛田氏、営業1部 係長 岩崎氏

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