アプリケーションなどのオブザーバビリティー(可観測性)機能を提供するDatadog Japanは9月1日、企業のサーバーレスコンピューティング利用の実態について調べたレポートを公開した。採用が着実に広がっているとともに、習熟が進む様子も分かったという。
サーバーレスコンピューティングは、ワークロードを実行するためのITインフラ環境の整備や運用にまつわる負荷を軽減するとともに、迅速かつ柔軟なアプリケーションの展開を可能にするテクノロジーとして注目されつつある。同社SEマネージャーの守屋賢一氏は、「加えて、トラフィックに応じた自動的なリソースの変更や実行時間を基準にした課金体系によるコスト最適化などのメリットもあり、ITインフラにまつわる作業負荷からユーザーを解放し、差別化や競合優位性を獲得するための業務に集中できる効果をもたらす」と解説する。
Datadog Japan SEマネージャーの守屋賢一氏
同社では、アプリケーションやサービスのエンドユーザーの体験の観点によるアプリケーションやシステムなどのパフォーマンスの監視や分析、改善のための各種オブザーバビリティーの機能を提供している。調査では、オブザーバビリティーの機能を利用するユーザーの状況を基に、サーバーレスコンピューティングの利用実態について分析した。
それによると、例えば、Amazon Web Services(AWS)のサーバーレス環境「AWS Lambda」では、2019年第1四半期を基準にした場合、2021年第1四半期までの2年間にLambda関数の呼び出し回数が2.5倍に増加した。守屋氏によれば、高スループットや突発的なピークの発生を伴うアプリケーションやサービスでの採用が多く、最近ではテクノロジーの採用に意欲的な企業のみならず金融やヘルスケアなどの分野でも導入が増えているという。
Datadogの調査レポートより
サーバーレス環境は、AWSの他にMicrosoft(Azure Functions)やGoogle Cloud(Google Cloud Functions)なども提供している。Datadogの調査では、2016年から提供されているAWS Lambdaの採用が約50%と高いが、Azure FunctionsやGoogle Cloud Functionsの採用率も伸びているといい、主要なクラウドプラットフォーマー全体でユーザーが広がっているとした。
Datadogの調査レポートより
サーバーレスに対するユーザーの習熟度合いが進んでいる様子も分かったとする。例えば、AWS Lambdaの起動時間について2019年と2020年の中央値を比べると、1年間で半分になっていた。「AWSのサービス内容に大きな変化があった訳ではなく、ユーザーがベストプラクティスを実践するようになってきたことがうかがえる」(守屋氏)
AWS Lambdaでのデプロイメントツールの利用状況は、オープンソースのServerless Frameworkの利用が9割近くを占めていた。また、Lambdaでのランタイムの利用状況はPythonやNode.jsが多く、小規模な環境ではNode.jsが多い一方、規模が大きいほどPythonの利用が高い傾向にあった。
Datadogの調査レポートより
守屋氏は、「今後もサーバーレスコンピューティングの利用が進むが、一方で環境が複雑化し、管理が難しくなることが懸念される。マイクロサービスアーキテクチャー環境全体を捉えたエンドツーエンドでのモニタリングや、テクノロジーだけでなくビジネス視点の指標も織り交ぜた監視が必要」と、同社サービスの特徴を交えて調査結果を総括した。
調査結果と合わせて同社カントリーマネージャーの国本明善氏が、2021年度第2四半期の業績状況を紹介し、売上高が前年度同期比で67%増加したことや、同四半期中に73の新機能リリースおよび機能強化を実施したことなどを報告。「クラウドネイティブなビジネスへの関心が高まるとともに、(アプリケーションやサービスの)エンドユーザーとITスタックの関係も近づいているため、ITスタックの問題などがエンドユーザーへ影響するようにもなり、オブザーバビリティーの必要性が高まっている」とコメントした。
Datadog Japan カントリーマネージャーの国本明善氏