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日本のDXが陥っている「パイロットの罠」--マッキンゼーに聞く - (page 2)

末岡洋子

2021-09-10 06:30

--PoC(概念実証)から取り組みがなかなか進まないことを「パイロットの罠(わな)」として指摘されています。マッキンゼーが考える対処法は何でしょうか。

加藤:日本企業の7割はパイロットに何年も費やしています。2年以上パイロットを続けているという企業も3割程度あります。

 パイロットのわなに陥る要因は、効果が出ているのかが分らないからです。どのぐらいビジネスにインパクトがあったのかわからないので、横展開ができない状況です。ただ、パイロットから組織改革につなげるためのアプローチやユースケースは明確になってきていますから、十分に改善が見込めます。

 われわれは「三位一体」で考えるべきだと考えます。つまり、「事業」「組織」「テクノロジー」の3つの要素が一体になれば、組織横断で変革を加速できます。

 日本企業に多いのが、「テクノロジー」→「組織」→「事業」の順番に進めるパターンです。まず基幹システムの刷新を決め、それに3年を費やすからその間は待つ(=テクノロジー)、出てきたデータを見てもよく分らない、データを誰も活用していないなどのスキル不足(=組織)――などの課題があり、結局、事業にインパクトが出ない、となります。組織の課題では、縦割りなので部門間連携が進まないという話も聞かれます。

 三位一体のアプローチは、順番を逆にして「事業」→「組織」→「テクノロジー」の順で進めます。事業課題からスタートし、デジタルを活用すると、どのぐらいインパクトがあるのかを考えます。

--三位一体のアプローチを用いたDX事例はありますか。

鍵谷:現在進めている製造業のお客さまは、まさにパイロットのわなに陥っていたところからスタートしました。DXをしたいというトップの目標があり、現場が面白そうなソリューションをITベンダーと議論しながら入れてみたのですが、効果が分からない、何を目指しているのかも分からない――その状態でわれわれにご相談があり、事業として目指すものをもう一度診断し直すことから始めています。

加藤:例えば、グローバル企業の調達部門なら、方々に点在する調達に関するデータに対して、人工知能(AI)を活用しデータを集約できます。こうすれば工数をかけることなく原材料の調達コストについてどのぐらいの改善が見込めるかといったことが分かります。これを実現するには、現場でどのデータを見ればどういう打ち手が考えられるのかといったスキル、実際に事業で活用するための変革マインドも必要ですし、それを支える経営トップのスキルも必要になります。

 長年お客さまの変革に関わってきましたが、6~7割は組織が壁になります。DXというものの、結局はアナログな組織が極めて重要なのです。

--DXに成功する企業と失敗する企業それぞれの共通点があれば教えてください。

加藤:失敗要因は、パイロットのわなに陥っているのかどうか分からない状態にあることです。経営者は、DXに取り組んでいるから大丈夫と思っていたものの、2~3年してから「ずっとこのプロジェクトをやっているな」と気づきます。その後に方向性を導き出せない場合も失敗します。

 成功要因はその裏返しです。パイロットのわなに陥っていたとしても、それに気づいてトップがこれをやり切ること。組織や働き方を変える部分なので、CEOのアジェンダとして進めていくべきです。

 成功要因はもう一つあり、全員が同じ方向を向いている点も重要です。どのように組織のスキルを向上させるのか、どのようなテクノロジーが必要なのかきちんと考え、事業・組織・テクノロジーの三位一体で取り組む必要があります。

鍵谷:DXであっても、デジタルから入ると、パイロットのわなに陥るようです。事業として何をするのか、その中でデジタルをどう活用するのかを描き、それをCEOが主導しているところはうまくいっています。

工場内に新しい設備を導入する際に3Dデータでシミュレーションできるよう、ドローンを複数飛ばして簡易版の見取り図を作るソリューション。付加情報として機材のメンテナンスのタイミングやメンテナンス方法を示す動画などを加えることもできる
工場内に新しい設備を導入する際に3Dデータでシミュレーションできるよう、ドローンを複数飛ばして簡易版の見取り図を作るソリューション。付加情報として機材のメンテナンスのタイミングやメンテナンス方法を示す動画などを加えることもできる

--マッキンゼーならではの支援はなんでしょうか。

加藤:診断からスタートし、実行計画の策定・実行と、フェーズに分けて進めます。これを通じて三位一体をきちんと支援できるところが強みです。事業では、以前から進めている組織変革の知見として、業界の知見、機能の知見をグローバルで有しています。

 組織についても、組織改革や組織スキルの向上のためのカリキュラムをそろえています。特に日本企業はITベンダーに依存しているところが多いので、内製化をどうすればいいのかというスキル構築プログラムも用意しています。また、縦割り組織をどうやって全社展開につなげていくのかなど、組織変革に特化した人材もいます。テクノロジーでは、社内に数千人規模のデジタルのエキスパートがいて、しっかりサポートできます。

鍵谷:クライアントのためにではなくクライアントと一緒にするというところもポイントです。われわれがいなくなってもクライアントが変革を持続できるように、組織変革を進めるところにこだわっています。

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