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内山悟志「デジタルジャーニーの歩き方」

全ての従業員のデジタルリテラシー向上策--教育・研修プログラムと自己変革を促す仕掛け - (page 2)

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2021-09-15 07:00

テクノロジーを日常と感じる環境の整備

 教育・研修は、多くの従業員を啓発し、気づきを与えるという点で有効な策であり、きっかけとなる取り組みといえますが、それだけでデジタルリテラシーが向上するというものではありません。教育・研修以外にも気を配るべき施策が幾つか存在します。まずは、デジタルの本質的な価値と無限に広がる可能性を理解するための機会や場を提供する仕掛けづくりが重要です。一般に、人は日常的に目にし、触れているものには順応します。

 例えば、ほとんどの人がICカードにお金をチャージして、駅の改札を当たり前のように通過しています。テクノロジーは、環境といえるほど浸透していれば、誰もが意識することなく活用し、恩恵を受けることができます。つまり、テクノロジーを日常と感じられるような環境を企業内に作ることが、全社員のデジタルリテラシーを高める早道となります。

 DXを組織カルチャーといえるまで浸透させた企業では、組織内の不合理なプロセスが徹底的に排除され、テクノロジーを駆使して地理的に離れていても協働できる環境が整っています。手書きや紙ベースの書類、手作業、目視、対面など、物理的な業務をテクノロジーによって全て置き換え、電子化、仮想化、自動化することができれば、企業内の業務プロセスは再定義され、それを前提に再構築されるはずです。

デジタルに興味を抱かせる情報発信

 一人ひとりが日常の生活や仕事の中で、自己啓発的にデジタル技術に向き合う姿勢を醸成することも重要であり、そのためにはデジタルに興味を抱かせるような情報を広く社内に発信することも有効な手段となるでしょう。ITRでは、こうした情報発信を啓発的アプローチと呼んでいますが、具体的には、社内セミナーの開催、イントラネットや社内SNSなどを用いた情報発信、最新技術の動向を周知するための勉強会やベンダーによるデモンストレーションの実施といった取組みが挙げられます。

 こうした啓発型アプローチに加えて、アイデア公募や社内ワークショップの開催などの参加型アプローチや、日常のコミュニケーションやデジタル化相談窓口の設置といった対話型アプローチを駆使して、デジタル化の重要性や可能性に触れる機会や場を提供することが有効といえます。

内発的動機づけと心理的安全性の確保

 デジタルリテラシーを向上させることの結果として、従業員の知識やスキルが上がることがゴールではなく、それによって行動変容が生じなければなりません。昨今、「内発的動機づけ」という言葉を耳にしますが、まさに全員が内発的動機づけに突き動かされた結果として、一人ひとりの行動様式が変わり、成果が生み出される状態を創り上げることが理想的な姿といえます。

 そのためには、実際にデジタル技術に触れてみる、新規性のあるデジタルサービスを利用してみる、業務のデジタル化を提案するといった行動を起こしやすい環境を整えることも重要です。チャレンジして失敗したらマイナス評価になってしまうようでは、誰もチャレンジしようとしなくなってしまいます。個人の目標管理や人事評価などにおいて、失敗を許容し、挑戦的な行動を奨励したり、社内でのさまざまな挑戦的活動を紹介したりすることで、従業員の心理的安全性を確保することにも気を配ることが求められます。

 多くの国内企業では、デジタルに精通した人材を大量に中途採用したり、全てをそのような人材に置き換えたりするようなことは難しいといえます。また、現場や顧客の状況を良く知るビジネスの最前線で活動するスタッフこそが実践の担い手となることが重要であり、DXの成功を左右します。この点は、日本企業が諸外国と比べて大きく水をあけられている点でもあり、全社的なデジタルリテラシーの向上が急務といえます。

内山 悟志
アイ・ティ・アール 会長/エグゼクティブ・アナリスト
大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストとして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任しプリンシパル・アナリストとして活動を続け、2019年2月に会長/エグゼクティブ・アナリストに就任 。ユーザー企業のIT戦略立案・実行およびデジタルイノベーション創出のためのアドバイスやコンサルティングを提供している。講演・執筆多数。

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