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日立製作所が研究開発に取り組む2つの量子コンピューター - (page 2)

大河原克行

2021-09-15 08:52

 日立の量子コンピューターへの取り組みのもう一つが、シリコン量子コンピューターの開発である。2021年9月に研究成果として発表した「Q-CMOSプロセス」により、大きな進展が見られた。Q-CMOSプロセスは、「量子ドットアレイ」と呼ばれる、1つの電子を閉じ込める箱をたくさん作り、一つひとつの電子を箱に閉じ込めて、高精度に制御する。量子ビットとして動作させることができる技術になる。

シリコン量子チップ実現に近付けた「Q-CMOSプロセス」
シリコン量子チップ実現に近付けた「Q-CMOSプロセス」

 水野氏は、「128個の量子ドットアレイと電子を制御するCMOS回路を同一チップに混載したことが大きな成果。量子ドットアレイとCMOS回路の適正化を実現している」と述べ、シリコンの集積性を最大限活用したアプローチにより早期実用化を目指すとした。

CMOS回路を混載した量子ドットアレイチップ
CMOS回路を混載した量子ドットアレイチップ

 また、シリコン量子チップの早期開発を狙う「オープン量子によりオープンな開発体制を構築する予定だとする。「その成果を設計にフィードバックする。ゲート型量子コンピューターの開発でも、ハードウェアとソフトウェアの両輪の開発と、フィードバックを活用したチクタク研究開発が必要」などと述べた。

 水野氏によれば、同社をはじめとする産業界の立場では、基礎科学よりもエンジニアリングに軸足が置かれ、学術分野と共同研究開発を進める必要があるという。日立は、政府や科学技術振興機構が推進する「ムーンショット型研究開発事業」の「大規模集積シリコン量子コンピュータの研究開発」プロジェクトに参加。ここでは超電導、イオントラップ、光量子、シリコンの4種類のハードウェア開発が進められ、日立はシリコンのプロジェクトマネージャーを担当しているという。

 しかし、「専門家の間でもどれが最後まで到達できるかで意見が分かれている。並行開発をしながら順次議論をしていくが、この4つと別のものが生き残る可能性もあり、仮に登場すればそれにも取り組む」(水野氏)などとした。

 水野氏によれば、日立がシリコンに注目するのは、「最終的なポテンシャル」だからとのこと。「シリコンは人類が獲得した技術の中でトップを争う素晴らしいもの。微細化が進み、5ナノの最先端テクノロジーもすぐ入手できるメリットがある」とする。その一方で、「集積度が高まらない点が課題で、打破にはパラダイムシフトが必要。素子の微細化に注目してきたが、今後は素子の集積度を高め、量子ビット素子を複数まとめて回路として動作させることを目指す」とした。

 大規模集積のシリコン量子コンピューターの実現には、高精度制御と読み出し回路やシリコン量子ビットアレイの集積度を高めことが重要だという。日立が発表したQ-CMOSプロセスは、この領域における集積度を高めるために必要な技術になるという。

 さらに、「ある程度の量子ビット数を超えると、一部の実験的なアルゴリズムになるが、古典コンピューターより圧倒的な性能を達成でき、『量子超越性』の壁を超えられる。次に突破すべきは事業化の壁(量子有用性の壁)で、『NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Compute=誤りあり、中規模量子コンピューター)』を古典コンピューターと組み合わせて価値を生み、事業化につなげられる」とした。

 なお、NISQ型量子コンピューターは、研究開発が盛んで、新分子の合成や、酵素の働きの解明など、量子化学や量子多体問題などとして活用されているという。また、都市の移動経路最適化問題など、量子機械学習や最適化問題の計算にも活用されているという。

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