ビジネスインテリジェンス(BI)ツールを提供するTableauは9月14日、エンタープライズ向けの機能強化などを含む最新アップデートに関して報道機関向けのオンライン説明会を開催した。同社では四半期ごとのアップデートを実施しており、最新版の「Tableau 2021.3」は米国で9月7日、日本では同8日に一般提供が開始されている。
まず概要を説明した同社 カントリーマネージャーの佐藤豊氏は「人がデータを見て理解できるようにする」という同社のミッションはSalesforce.comに買収された後も全く変わっていないことを強調。「データ分析をより速く、簡単に、美しく、そして便利にしていく」ためのアップデートを継続的に行っているとした。
Tableau カントリーマネージャーの佐藤豊氏
また、同社製品が市場で評価されている理由として、「優れた決断でも、遅すぎれば悪い決定と同じ」と指摘し、それを変革していくために「データ探索と新しいインサイトの発見が非常に迅速で簡単なため」だと語った。一方で、企業がデータドリブンな組織へと変革していく際の課題として「ガバナンスを強化すべきか、アジャイルなセルフサービスを優先すべきか」といった悩みや、「機能重視でいくのか、全社に展開できる、より幅広いユースケースに合わせた機能を実装するか」「いかに手軽でスケーラブルなプラットフォームを実装するか」「費用対効果をどう出すか」といった悩みがあったと紹介し、こうした経営幹部の悩みを解決していくことを目指して機能を強化しているとした。
その上で同氏は、「モダンアナリティックスを採用する際に最も重要なことは、『セルフサービス分析とガバナンスを互いに対立させない/共存させる』ことだ」と指摘した。その意味は、「セルフサービスは、誰もが信頼をもってデータを利用し、事実に基づくビジネスの判断を下すことができる。自身が抱えている質問に対する回答を簡単に得られるように設計をしている」といい、「ガバナンスは、コントロールとロール(役割)、そして反復可能なプロセスの組み合わせだが、セルフサービスを可能にする基盤としてガバナンスが重要になってくる」とした。
「セルフサービス環境では、コンテンツ作成者はさまざまなデータソースとつながって、ワークブックやその他のコンテンツを作って従業員が使えるようにパブリッシュする能力を持っているが、しっかりしたガバナンスがないと、データソースのコピーが簡単にできることから、コピーが多数作られてユーザーを混乱させたり、間違ったレポートやダッシュボードの作成などのエラーの確率を高めたり、より多くのシステムリソースを消費する可能性が出てくる」(佐藤氏)
それが、「ガバナンスによって、組織の適切な人が必要なときに必要なデータを入手できるようにできるので、それによってデータの説明責任を生み、安全かつ信頼できるコンテンツにあらゆるスキルレベルの人がアクセスできるようにすることが可能になる」ということだ。
今回発表された新プラットフォームは、エンタープライズ向けの機能がさらに強化されたものだ。アップデートのポイントとしては、「『Tableau Server』もしくは『Tableau Online』に『Tableau Data Management』と『Tableau Server Management』をバンドルした新しいエンタープライズサブスクリション」と「ガバナンスとインフラストラクチャーに対する新機能」の2点となる。なお、前者の新サブスクリプションでは、「Creator」「Explorer」「Viewer」の各ライセンスがそれぞれバンドルされた形を用意し、「企業の誰もがよりビジネス効果を上げるためのライセンスを提供する」意図があるという。
最新版Tableauプラットフォームの概要
具体的な新機能としては、Data Managementに対するガバナンス機能の強化によるセルフサービス分析の推進、Server Managementに対する導入、監視、保守などのエンタープライズ機能の強化、ユーザー向けの新機能としては50種類以上の部門別/業種別テンプレートを含む「ダッシュボード スターター ギャラリー」(2021.4で提供予定)、2021年7月にSalesforce.comによる買収完了が発表されたビジネスコミュニケーションツール「Slack」との連携の強化、地理空間分析機能の強化などが行われている。
Tableau Data Managementの主な強化点
Tableau Server Managementの主な強化点
これらの新機能追加について同氏は、「個人のスキルレベルやデータとの関係に関わらず、組織レベルでのデータの価値を訴求していきたい。そのために、エンタープライズ向けのサブスクリプションでData ManagementとServer Managementをバンドルすることでデータとダッシュボードに対する信頼を高めていく。最終的には、新しい価格モデルによって、全社に拡げる際に拡げやすいように最適化されたモデルを提供することで支援していきたい」とまとめた。
Tableau 2021.3の主な新機能