HPEのサービスビジネスへの変革は順調--望月社長が概況説明

國谷武史 (編集部)

2021-09-16 06:00

 日本ヒューレット・パッカード(HPE)は9月15日、2021会計年度第3四半期決算を踏まえたビジネスの状況に関する説明会を開催した。代表執行役員社長の望月弘一氏は、「着実な回復路線にある」と総括し、同社が取り組むメーカーからサービス企業への変革が順調に進んでいると述べた。

日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長の望月弘一氏
日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長の望月弘一氏

 米国時間9月2日に発表されたグローバルでの業績は、売上高が前年同期比1%増の69億ドル、非GAAPベースの1株当たり利益が47セントとなり、アナリストの予想を上回る結果だった。特にフリーキャッシュフローは332%増となっている。

 同社は、「Edge to Cloudカンパニー」というビジョンと、あらゆるポートフォリオをサービスで提供する「as-a-Service」化を経営戦略に掲げる。成長事業領域ではインテリジェントエッジのビジネスが23%増、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)とミッションクリティカルシステム(MCS)が堅調な成長を達成し、中核事業とするコンピュート(サーバー関連)やストレージは受注ベースで2桁増、as-a-Service事業も受注ベースで46%増となった。

HPEの2021会計年度第3四半期のグローバル業績
HPEの2021会計年度第3四半期のグローバル業績

 「as-a-Service」化の戦略は、社長兼最高経営責任者(CEO)のAntonio Neri氏が2019年に宣言したもので、2022年を実現目標年次とする。望月氏は、Neri氏のメッセージを引用して「コロナ禍の後を見据えたデジタルワーク、データドリブンのビジネス変革が重要であり、『データが通貨』とも称される中で、HPEが顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するパートナーとなる取り組みが着実に進んでいる」とした。

 こうした経営戦略に基づく最新の各種施策は、同社が6月にオンラインで開催した年次イベント「HPE Discover 2021」で披露された。望月氏によれば、グローバルで6万人以上、日本からも3600人以上が同イベントに参加したという。

 説明会ではDiscoverにおける多数の発表事案の中から、「as-a-Service」モデルの代表となる「HPE GreenLake」の最新動向と、新たな施策になる「Project Aurora」などが紹介された。

 HPE GreenLakeは、コンピューティングリソースなど各種のITサービスを従量課金型で提供するクラウド型のサービスとして提供する。常務執行役員 Pointnext事業統括兼ストラテジック・アライアンス統括本部長の小川光由氏によれば、顧客は50カ国以上の1100社以上に上り、契約総額は約54億ドル、継続率95%以上という。この名称になる前は、「HPE Flexible Capacity」としてハードウェア製品主体で提供されており、「世界約10年、日本でも約8年の歴史を持つサービスとして定着している」(小川氏)とする。

「HPE GreenLake」の変遷
「HPE GreenLake」の変遷

 直近では、医療業界向け電子カルテシステムのプラットフォームサービスなどの業界特化型メニューや、統合基幹業務システム(ERP)パッケージ「SAP ERP」向けプラットフォームなどのワークロード特化型メニューの拡充を図ったほか、パートナー連携ソリューションも広げてきた。

 Discoverでは、GreenLakeのサービスをより簡便に使えるとする「HPE GreenLake Lighthouse」を発表している。顧客が必要とする機能などをモジュール化しており、顧客は想定利用規模などを試算して必要なモジュールを選択し、それらを展開する稼働環境(クラウドなど)を指定すれば、短期間でIT環境を構築できるという。運用管理もクラウドコンソールで行う。新規ユーザーが手軽に試用できるメニューも組み入れたとする。

 一方のProject Auroraは、エッジからクラウドデータセンターまでを一気通貫で保護するセキュリティのフレームワークになるという。この中では、「ワークロード」「プラットフォーム」「OS/ハイパーバイザー」「インフラストラクチャー」「サプライチェーン」の5つのレイヤーを定義し、各レイヤーにおけるセキュリティ脅威やリスクを捉え、各種セキュリティ機能の提供などを通じて安全性と信頼性を担保する。

 執行役員 コアプラットフォーム事業統括の本田昌和氏によれば、例えば、顔認識の人工知能(AI)技術とデータの処理をグローバルで実行しようとすれば、その環境は店舗現場などのエッジ、ネットワーク、マルチクラウドのデータセンターというように、複数の環境にまたがる。これに対し、従来の境界防御型のセキュリティ対策では抜け漏れが生じかねない課題があるとする。「例えば、サプライチェーンのレイヤーでは製品供給などにおけるサイバーリスクに対応し、ファームウェアが改ざんされていないことをシリコンレベルで証明する」(本田氏)。今後はGreenLakeの各種サービスにProject Auroraの成果を組み込んでいくとした。

「Project Aurora」のコンセプト
「Project Aurora」のコンセプト

 この他にDiscoverでは、オンプレミスやIaaSなどのサーバーを遠隔で運用管理するクラウドサービス「コンピュートクラウドコンソール」や、データの保護などを行う「データサービシーズクラウドコンソール」も発表。また、9月1日には、データ保護、管理機能を提供するZertoの買収を発表している。

 本田氏は、「Zertoの買収により、これまで以上にきめ細かい粒度でのバックアップを高速に行えるようになり、ランサムウェアの被害を受けても迅速に復旧を図るといったことが可能になる」と説明。Zertoの技術やサービスはデータサービシーズクラウドコンソールに統合されるといい、日本でも今後提供を開始する予定だとした。

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