IIJ、VMwareベースの第2世代IaaS「IIJ GIO P2 Gen.2」を発表

渡邉利和

2021-09-17 12:46

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は9月15日、クラウド事業と新サービスについて報道関係者向けのオンライン説明会を開催した。

 同社 執行役員 クラウド本部長の染谷直氏はクラウド事業について、ネットワークサービス「IIJ Omnibus」の上にクラウドサービス「IIJ GIO」や統合運用サービス「UOM」、そしてAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)といったパブリッククラウドへの直接接続を含むサービス群が提供される、という全体像を説明した。

IIJ 執行役員クラウド本部長の染谷直氏(左)とクラウド本部 クラウドサービス3部長の宮崎直樹氏
IIJ 執行役員クラウド本部長の染谷直氏(左)とクラウド本部 クラウドサービス3部長の宮崎直樹氏

 続いてビジネス概況については、企業のクラウド移行や採用増加に伴い売り上げが拡大しているほか、IIJ GIOなどの自社クラウドに加え、AWS、Azureなどのパブリッククラウドによる売り上げも増加しており、複数のクラウドを組み合わせるマルチクラウドとして利用が拡大していると紹介した。

 また染谷氏は、7月に発表された同社実施の「全国情シス実態調査 集計レポート」に触れ、「クラウド化がかなり浸透してきている感触を持った一方で、意外な数字を掴むことができた」と振り返った。これは、国内約700社の情報システム部門を対象に実施された調査で、サーバーがオンプレミスにあるのかクラウドにあるのかを聞いた結果、「サーバーの50%以上をクラウドに移行済みの企業は20%以下にとどまる」という。

IIJによる調査結果では、サーバーの50%以上をクラウド移行済の日本企業はまだ20%以下だという
IIJによる調査結果では、サーバーの50%以上をクラウド移行済の日本企業はまだ20%以下だという

 同氏は「クラウドがかなり浸透してきている、クラウドを使う利用シーンが増えている、という感触とは裏腹に、日本に関しては、まだまだ多くの資産がオンプレミスに残っている」と指摘。こうした実態への施策として、「オンプレミス(システム)のクラウド化に焦点を当て、いかに既存システムに影響を与えず、オンプレミスで発生していたような課題をなくすためのサービスの検討/開発を行ってきた」とした上で、オンプレミスのクラウド移行における第三の選択肢として、新しいクラウドサービスを10月1日にリリースする予定だと語った。

 新たなサービスの「IIJ GIOインフラストラクチャーP2 Gen.2」(IIJ GIO P2 Gen.2)は、「ハードウェアを抽象化しつつ物理層とユーザー契約層を分離して、仮想リソース型のIaaSを提供する」というものだ。別の表現では「プライベートクラウド同様の移行性を有しつつ、パブリッククラウドに通じる『オンデマンドで自由にリソースが追加/削除できる』もの」だという。

 さらに染谷氏は、「オンプレミスからの移行を支えるIIJ GIO P2 Gen.2をハブ(HUB)として、AWSやAzureといったパブリッククラウドを併用するマルチクラウドの世界を作っていく」戦略だとした。機密性の高い情報やシステムはIIJ GIOに置き、一方でパブリッククラウドの先進性などについては連携する、という考え方になる。マルチクラウドを実現するために必要な各種機能群は、同社がサービスとして提供するという。同氏は「こういった環境を企業が活用することで、日本企業の競争力強化もしくは人材不足に対する対応などにIIJが一役を担えれば」と語った。

IIJのマルチクラウド戦略。まだオンプレミスに残っている重要なIT資産の「安心・安全」なIIJ GIOへの移行を推進する一方、IIJ GIOと各パブリッククラウドを接続するサービスを充実させてIIJ GIOユーザーがパブリッククラウドを併用しやすい環境を提供する
IIJのマルチクラウド戦略。まだオンプレミスに残っている重要なIT資産の「安心・安全」なIIJ GIOへの移行を推進する一方、IIJ GIOと各パブリッククラウドを接続するサービスを充実させてIIJ GIOユーザーがパブリッククラウドを併用しやすい環境を提供する

 続いて、同社 クラウド本部 クラウドサービス3部長の宮崎直樹氏が、IIJ GIO P2 Gen.2の詳細を説明した。

 同社では2009年にIIJ GIOのサービス提供を開始し、2012年には「持たないプライベートクラウド」を掲げて、VMware環境をクラウドで提供している。この環境では、オンプレミスの移行先としてソフトウェアやシステムの改修を最小限にとどめながらクラウドへ移行できる一方、従来は物理サーバー単位でのリソース追加が必要だったことや、VMwareのバージョンアップなどで運用負担が生じるなど、やや使いにくい面も残っていたという。

IIJのクラウド事業のこれまでの経緯。2012年に「持たないプライベートクラウド」としてVWシリーズの提供開始、2015年にはパブリック型とプライベート型の両方を提供する「P2」に進化、そして今回さらにP2が「第2世代」になる、という流れ
IIJのクラウド事業のこれまでの経緯。2012年に「持たないプライベートクラウド」としてVWシリーズの提供開始、2015年にはパブリック型とプライベート型の両方を提供する「P2」に進化、そして今回さらにP2が「第2世代」になる、という流れ

 今回のIIJ GIO P2 Gen.2ではこうした点を解消することを狙い、仮想サーバーリソースプールから仮想CPU/メモリー(1vCPU~)、仮想ストレージ(10GB~)を柔軟に追加し、ユーザーの管理下に置くことができる「IIJ GIOインフラストラクチャーP2 Gen.2 フレキシブルサーバリソース」を10月1日にリリースする予定だ。

フレキシブルサーバリソースでは、利用可能なリソースにそれぞれ単価が設定されており(プライベートバックボーンと統合運用管理サービスへの接続ゲートウェイは無償で提供される)、必要なリソースを組み合わせて環境を構築、合計額を支払う、という形になる
フレキシブルサーバリソースでは、利用可能なリソースにそれぞれ単価が設定されており(プライベートバックボーンと統合運用管理サービスへの接続ゲートウェイは無償で提供される)、必要なリソースを組み合わせて環境を構築、合計額を支払う、という形になる

 なお、従来の物理サーバー単位でのリソース追加は「デディケイテッドサーバリソース」という名称に変更した上で継続提供される。利用料金は使用するリソースごとに設定された単価の合計となるが、一例として8vCPU、32GBメモリー、ストレージ400GB、Windows仮想サーバー4台、ファイアウォール機能と各サーバーのバックアップを遠隔保存という構成の場合、月額費用が9万8800円になると紹介された。

従来提供されていた物理サーバー単位での契約は「デディケイテッドサーバリソース」という名称で継続される。追加/削除の単位となるリソース量が異なることに加え、ハイパーバイザーの運用管理がユーザー責任ではなくなる点が負担軽減に大きく寄与すると思われる
従来提供されていた物理サーバー単位での契約は「デディケイテッドサーバリソース」という名称で継続される。追加/削除の単位となるリソース量が異なることに加え、ハイパーバイザーの運用管理がユーザー責任ではなくなる点が負担軽減に大きく寄与すると思われる
利用料金の目安として示されたサンプル構成例
利用料金の目安として示されたサンプル構成例

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