欧州連合(EU)は間もなく、European Chips Act(欧州半導体法)の制定に向け取り組む計画だ。欧州域外の半導体メーカーへの依存度を低減し、サプライチェーンを強化する狙いがある。
欧州委員会(EC)のUrsula von der Leyen委員長が現地時間9月15日、2021年施政方針演説で計画の詳細を明らかにした。
von der Leyen氏は、「生産を含む、最先端の欧州半導体エコシステムを共同で構築することが目標だ」としている。「それにより、安定した供給を保証して、画期的な欧州テックの新市場を開拓できるようになるだろう」(同氏)
ECは3月、「Digital Compass」計画を発表し、EUが2030年までにデジタル主権の確立などを目指すことを明らかにした。その一環として、世界の半導体供給における欧州のシェアを、現在の9%から20%に引き上げたい考えだ。欧州は1990年代に、世界の半導体産業の44%を占めていたとされている。
「需要が伸びているにも関わらず、半導体不足が原因で、生産ライン全体がペースダウンして稼働している」と同氏は指摘した。
さらに「世界的な需要が爆発的に増加する中、欧州のバリューチェーン全体のシェアは、設計から生産能力まで縮小している。これは、アジアで製造されている最先端のチップにわれわれが依存しているためだ。つまり、単なる競争力の問題ではない。技術的主権の問題でもある」と同氏は言う。その一方で、von der Leyen氏は、そのレベルに達するのは容易ではないことも認めている。
同氏は、「困難な課題であることは分かっている。実現不可能だと主張する人がいることも知っている」と話した。
同時期に、米国も欧州と同じような課題に直面している。Semiconductor Industry Associationの6月の発表によると、世界における米国の半導体製造能力は、1990年の37%から現在は12%まで落ち込んでいる。
アジアが半導体の製造と技術で席巻しているのは、台湾の半導体受託製造(ファウンドリー)TSMCや韓国のサムスンによるところが大きい。
Intelは8月、米国防総省(DoD)と半導体製造に関する大規模な契約を締結した。また同社は、欧州に2つのチップ製造工場を建設することを検討している。Digital Compass計画を支援したい考えのようだ。実現すれば、今後10年間の投資額が、総額800億ユーロ(約11兆円)に達する可能性がある。
また米国では、半導体の製造や研究に500億ドル(約5兆4800億円)を投じるCHIPS(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors:半導体製造支援)法の推進が米連邦議会上院で議論されている。
新型コロナの感染拡大が始まって以来、米国と欧州の自動車メーカーはチップの供給不足から、生産が著しい制約を受けている。GartnerのアナリストのAlan Priestley氏が最近、CNBCに語ったところによると、世界的なチップ不足が深刻化した一因は、チップメーカーが新しい製造プロセスを用いた、より収益性の高い生産施設に投資している一方、自動車メーカーは旧来の製造プロセスで作られたチップを使う傾向があることだという。例えばTSMCの場合、同社の四半期売上高で自動車向けチップが占める割合はわずか4%で、Appleなどのスマートフォンメーカー向けチップは約半分を占めているという。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。