Amazon Web Services(AWS)を育て上げ、2021年7月に親会社であるAmazon.comのCEO(最高経営責任者)に就任したAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏は、自らのキャリアの過程で何を考え、どんな姿勢で仕事に臨んできたのか。同社のイベントでそんな話を聞く機会があったので、そこから筆者が印象深く感じた点をお伝えしたい。
大学卒業時は「一人前になりたいとの情熱もなく…」
「Amazonキャリアデー2021」で話すAmazon.com CEOのAndy Jassy氏
「思い描いたキャリアプランのようには行かなかった」
Jassy氏は、アマゾンジャパンが9月16日にオンラインで開催した「Amazonキャリアデー2021」で、自らのキャリアを振り返ってこう語った。
今、ビジネスの世界で最も注目を浴びている「時の人」は、キャリアについてどんなことを話すのか。もちろん、同氏のキャリアの内容は既に書き記したものが数多くあるが、さまざまな局面でどんなことを思ったのか、ご本人から直接聞く機会は初めてだったので、耳を澄まして取材に臨んだ。以下に、筆者が印象深く感じた同氏のコメントを挙げていきたい。
まず、冒頭で紹介したキャリアプランの話から入ると、Jassy氏はハーバード大学に在学中、学内の新聞や雑誌の事業運営を行うとともに、夏休みにはテレビ局で番組制作のアシスタントも担った。そんなメディアの経験とスポーツが好きだったことから、「スポーツキャスターになる」ことを決意したという。これが、最初の憧れともいえるキャリアプランである。ただし、就職はそのプラン通りには行かなかった。
Jassy氏はその頃の心境について、次のように話した。
「当時の私には、同年代の新社会人が抱くような、責任のある仕事を担って一人前になってみせるといった強い情熱も、他の可能性を追求するような貪欲な姿勢もなかった」
若い頃からバリバリやってきたのかと思いきや、同氏にも多くの若者が経験するような感覚があったようだ。
その後、Jassy氏は知人の紹介でグッズの販売会社でマーケティングに従事。そこでの経験を基に同僚と起業もしたが、ビジネスを大きくすることはできなかった。このタイミングで、同氏は次のように思い立った。
「もともとスポーツキャスターになることしか考えていなかったので、ビジネスに必要な勉強や資格を取得しようと考えたことすらなかった。起業の経験もしたことで、今度はビジネスを大きくしたいとも考えた。そこで、改めて大学院でしっかりと勉強することにした」