デル・テクノロジーズは9月22日、データ保護に関する調査レポート「2021 Global Data Protection Index」(GDPI)を発表した。世界15カ国、14業種、従業員数250人以上の企業からIT意思決定者1000人を対象に、各社のデータ保護環境への理解を深めることを狙いに実施された。実施期間は2021年2~4月。前回は2018年9~11月に実施されている。

デル・テクノロジーズ DPS事業本部 本部長の芳澤邦彦氏(左)と同 事業推進担当部長の西賴大樹氏
同社 DPS事業本部 本部長の芳澤邦彦氏はまず、デジタルデータの現状と影響について「1つの企業内で管理するデータ総量の平均値は、8.88PB(2018年)から9.85PB(2021年)に11%成長。一見落ち着いているようにも見えるが、5年前(2016年、1.29PB)と比べると約6倍(663%)になっている」と指摘、データの置き場所については「既存システムの更改では従来通りオンプレミスかクラウドかという選択になっている一方、新規システムの場合は圧倒的にクラウドファーストになっている」という調査結果を紹介した。
また、過去12カ月以内に障害やインシデントを経験したかどうかという質問に対しては、前回調査と比較して「サイバー攻撃やサイバーインシデントによるデータアクセス阻害」が11ポイント増、続いて「データロス」が5ポイント増となっており、その原因のトップが「ハードウェア障害」から「ソフトウェアエラー」に入れ替わったことと、「外部からのセキュリティ侵害」と「サービス/クラウド プロバイダーのエラー」が急増している点が目を引く。

「ダウンタイム/データロスの原因と影響」について。原因として長らくトップだった「ハードウェア障害」がついに2位に陥落した点と、「外部からのセキュリティ侵害」が急増している点が注目される。また、日本の平均復旧時間がグローバルよりも4時間も遅い点もポイントだろう
これらは、サイバー犯罪者によるランサムウェア攻撃の増加や、時折発生するクラウドサービスプロバイダの大規模障害の影響を反映したものと見られる。また、グローバルと比較した際の日本の課題と言えそうなのは、「最重要なアプリケーションでシステムダウンが発生した際の平均復旧時間」がグローバルの6時間に対して日本は10時間となっている点だ。
なお、過去12カ月以内に予期せぬダウンタイムやデータロスを経験した企業は日本では78%(グローバルは76%)で、前回調査から12ポイント増加しており、年々増加傾向だという。さらに、データロスによる損失額も上昇しているが、これはデジタル変革(DX)の進展などによってデータの価値が向上していることの反映と見られる。
「データ保護環境の現状」では、「複数ベンダーを利用したベストオブブリード型が主流」である一方、ベンダーの数を減らすことにメリットを感じると回答した企業が63%となっており、さらに今後as-a-Serviceの検討においては「Backup-as-a-Service(BaaS)の優先度が高い」と回答した企業が60%だった。
こうした結果を踏まえて同氏は、サイバー脅威がデータ保護をより困難にしており、ユーザー企業では「重量なデータ(ワークロード)の効率的かつ確実な保護と復旧が、リスク管理において重要なポイントの1つとなってくる」ことと、「ベンダー側にはas-a-Serviceモデルなどの消費(コンサンプション)型でのソリューション提供能力」がより一層求められるようになってくるとの展望を示した。

GPDIのまとめ
続いて、同社 DPS事業本部 事業推進担当部長の西賴大樹氏がデータ保護事業の最新ソリューションについて説明した。

同社のサイバー脅威対策分野におけるプレゼンス
まず、サイバー脅威に対する対応としては、同社は以前からサイバー被害からの確実なデータ復旧を目指した「PowerProtect Cyber Recovery」を提供しているが、9月から新たに「Managed Service for Cyber Recovery Solution」が追加された。同社の専門家が「Cyber Recovery Vault」の日常的な運用管理とリカバリー活動をサポートするもの。また、増え続けるデータの保護が困難になってきており、重要データを効率的かつ確実に保護するため、同社のデータ保護管理ソフトウェア「PowerProtect Data Manager」に新機能が追加された。同日付で提供が開始されたv19.9に実装された「Transparent Snapshots」と「Dynamic NAS Protection」がそうだ。

PowerProtect Data Manager v19.9の主な新機能
Transparent Snapshotsは、データ量の増大に伴って大規模化してしまった仮想マシン(VM)を従来のVADPでは保護しきれなくなりつつあることに対応し、同社とVMwareが共同で開発した最新の保護手法だという。また、Dynamic NAS Protectionは大容量の非構造化データを保護する機能で、従来最速とされていたNDMPによるバックアップでも所定時間内に完了できないような数百TBクラスのデータを保護できる新たな手法だという。
最後に、市場から求められるas-a-Serviceモデルでの機能提供の拡充に関しては、従来のオンプレミス向けソリューションとas-a-Service型のソリューションを組み合わせて活用することでより強力な機能を発揮する例として、PowerProtect DD(旧Data Domain)の多次元拡張を実現する「PowerProtect DD Smart Scale」のテクノロジープレビューも開始されたという。PowerProtect DDアプライアンスOSライセンスの一部として提供され、有効な保守契約があるユーザーは追加費用なしで利用可能。2022年上半期(2~7月)に全世界で提供予定となっている。

PowerProtect DD OS 7.7にテクノロジープレビューとして実装されたPowerProtect DD Smart Scaleの概要