量子コンピューターは、何十年にもわたって科学者たちの想像力をかき立ててきたが、今は資金力のある投資家たちからの注目も集めている。
調査会社のPitchBookによれば、2021年にはすでに10億2000万ドル(約1100億円)相当の民間資金が量子コンピューター業界に投じられているという。これは過去3年間の投資額の合計よりも多く、しかも2021年はまだ数カ月残っている状況だ。
この業界への年間投資額は、2年前には1億8750万ドルにすぎなかったし、2015年にはわずか9350万ドルだった。
提供:Quantum Motion
投資が増えているもっとも大きな理由は、単純に業界が拡大しているためだ。別の調査会社であるMcKinseyの分析によれば、量子コンピューティング分野のスタートアップは、2013年には一握りしかなかったにも関わらず、2020年には200社近くにまで増加したという。
またその成長に伴い、量子コンピューターがその驚異的な成果をいつ頃発揮し始めるかも明確になってきた。IBMは2020年、量子コンピューティングに関する同社のロードマップを発表し、2023年に1121量子ビットのプロセッサーを実現すると予告した。同社はこれが、量子システムを商用化するための障害を克服する転換点になると考えている。
より小規模な企業も、同様の発表を行っている。米国のスタートアップであり、冷却原子ベースの量子コンピューターを開発しているColdQuantaは、2020年に100量子ビットのプロセッサーを実現するとしており、3年後には1000量子ビットのプロセッサーを実現したいと述べている。
また、米国の別の量子技術企業であるPsiQuantumは、2025年までに本格的な量子コンピューターを開発すると宣言しているという。
投資家からの投資もこうした展開に伴って増えている。Battery VenturesのゼネラルパートナーであるItzik Parnafes氏は、「量子コンピューティング技術は1980年代から存在していたが、ここ数年で、実生活で利用できるレベルまで規模が拡大されつつあるとともに、最初に実用化されるユースケースが特定されそうなところまできている」と話す。
量子コンピューターで使われている「量子ビット」は、従来のコンピューターで言うビットの量子版だ。量子ビットは多くの情報を保持することができるため、量子コンピューターは現在のコンピューターでは解決できないような計算を行える飛躍的な計算能力を備えている。