松岡功の「今週の明言」

日本テラデータ社長が憂う「日本企業がDXで後れをとる懸念」とは

松岡功

2021-10-01 10:53

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、日本テラデータ 代表取締役社長の高橋倫二氏と、デル・テクノロジーズ 執行役員データセンターソリューションズ事業統括 製品本部長の上原宏氏の発言を紹介する。

 

「DXのカギはデータとアナリティクスにある」
(日本テラデータ 代表取締役社長の高橋倫二氏)

日本テラデータ 代表取締役社長の高橋倫二氏
日本テラデータ 代表取締役社長の高橋倫二氏

 日本テラデータは先頃、親会社である米Teradataが大手企業のIT投資に関するグローバル調査を実施した結果や、さらなるデータ活用に向けたマスターデータ管理(MDM)ソフトウェアの新製品を発表した。高橋氏の冒頭の発言はそのオンライン発表会見で、同社を取り巻くビジネスの状況や取り組み姿勢を述べた中でDX(デジタルトランスフォーメーション)について語ったものである。

 グローバル調査結果については発表資料、新製品については関連記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言をめぐる高橋氏の話に注目したい。

 「Teradataはこれまで40年以上にわたって、データとアナリティクスの専門企業としてビジネスを続けてきた。対象となるデータ市場は現在850億ドル規模で、2025年には1500億ドル規模へ急成長すると予測されている。この市場においてTeradataは1500社を超えるさまざまな業種の大手企業に支持されて、強固な顧客基盤を確立している」

 自社についてこう話した高橋氏は、さらに次のように続けた。

 「私たちは常にデータとアナリティクスの最新の潮流を見据え、クラウド時代に合わせて主力製品のTeradata Vantageの利用形態をサブスクリプションモデルに切り替えた。この動きは大きなインパクトがあり、特に日本ではほぼ全てのお客さまがこのモデルを採用している。そうした変化がありながらもビジネスは順調で、日本では売上高で二桁成長を維持しており、導入顧客数も150社を超える形となっている」

 そして、先述したグローバル調査の結果から、表1を示しながら、「上段はDXへの投資意欲を示した結果だが、この数字を見ると、グローバルも日本もほとんど同じ割合だ。しかし、下段に記されている2022年のIT投資意欲を見ると、グローバルと日本の間で大きな差が出た結果となった。私たちはこの差に注目し、日本のお客さまがDXの取り組みで後れをとることがないように尽力していきたい」と語った。

表1:Teradataが実施したDXへの意欲と投資に関するグローバル調査結果(出典:日本テラデータ)
表1:Teradataが実施したDXへの意欲と投資に関するグローバル調査結果(出典:日本テラデータ)

 さらに、「そのために、私たちはお客さまが求めている価値を、データとアナリティクスを駆使して実現していく。なぜ、そう言えるのか。DXのカギはデータとアナリティクスにあるからだ」と強調した。冒頭の発言はこのコメントから抜粋したものである。

 それにしても、DXにおけるグローバル調査の結果は、「DXへの意欲はあるが、行動が伴わない日本企業」の姿を浮き彫りにしているといえそうだ。

 先述した同社の主力製品であるコネクテッドクラウドデータプラットフォーム「Teradata Vantage」は図1のような構成で、ハイブリッドやマルチクラウド環境でも柔軟に利用でき、しかも「競合他社と比べて卓越したコストパフォーマンスを実現している」と高橋氏は幾度も強調していた。

図1:Teradata Vantageの概要(出典:日本テラデータ)
図1:Teradata Vantageの概要(出典:日本テラデータ)

 同社はまさしく、この分野の「老舗」ベンダーだが、Teradata Vantageによるビジネスを見ると、時代の変化をしっかりと捉えていることがうかがえる。とはいえ、高橋氏自身が「DXのカギ」と言うように、データとアナリティクスの市場は今後、さらに熾烈(しれつ)な激戦区となっていくのは間違いない。その中で確固たる存在感を発揮し続けられるか。注目していきたい。

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