データサイエンスと人工知能(AI)は、創薬と医薬品開発に新たな局面をもたらしており、この分野ではコンピューティングと機械学習の重要性が増している。製薬会社は、この変化を受けて、必要なインフラや、データや、ツールを整え、データサイエンティストと生物学や生命科学の専門家の両方を含むチームを構築している。
製薬業界やバイオテクノロジー業界のイノベーションについての議論は、大規模な組織が、AIのツールや技術と、解決すべき問題をよく知る各分野の専門家をどう組み合わせているかを垣間見せてくれる。
さまざまな分野のキーマンに話を聞くインタビューシリーズであるCXOTalkの第717回では、製薬会社がAIや機械学習をどう利用しているかについて内部の視点から知るために、Bulent Kiziltan博士を招いて話を聞いた。Kiziltan博士はスイスの製薬・バイオテクノロジー企業であるNovartisのAIイノベーションセンターで、因果分析&予測分析・データサイエンス・AI部門の責任者を務めている人物だ。
同氏は、筆者が知る中でも、AIに関する取り組みの運営や指揮について、もっともはっきりとした意見を述べている人物の1人だ。今回のインタビューは、データサイエンスやAIチームの運営に関する有益で実践的なヒントを与えてくれるものだった。
以下ではそのインタビューの要点をまとめた。また、CXOTalkのサイトでインタビューの全文書き起こし(英語)を読むこともできる。
製薬業界におけるAIとデータサイエンス
創薬と医薬品開発の分野は、この5年から10年、停滞していました。それはコストが高いためでもありますし、またプロセスの規模を拡大することが非常に難しいためでもあります。私たちは、AIがこの状況を改善してくれる可能性があると考えており、多くの製薬会社がこの分野に投資しています。
一般に、AIやデータサイエンスを使う際には2つのやり方があります。1つ目はユースケースを軸にしたもので、そのユースケースのサービスを事業部門に提供するというやり方です。
もう1つは、学問の世界と事業部門を交わらせるやり方で、私たちが採用しているのはこちらです。技術分野の興味深いノウハウの多くは学問の世界で生まれており、私たちは、プロセスの規模を拡大するために、そうした技術の発展やインフラを必要としています。