クラスメソッドは10月4日、米Amazon Web Services(AWS)と4年間の戦略的協業契約「Strategic Collaboration Agreement」(SCA)を締結したことを発表した。クラスメソッドは、クラウドへの移行と最適化支援、中堅中小企業と地方向けAWS導入支援の強化、国内の独立系ソフトウェアベンダー(ISV)によるSaaS開発の支援に努める。
クラスメソッド 代表取締役社長 横田聡氏
これらの3分野の施策を通じて、2025年までに100億円規模の新規ビジネス創出を目指す。クラスメソッド 代表取締役 横田聡氏は「(活動を通じて)社内外にハイスキルなAWSエンジニア(開発者)を育成したい」と意気込みを語った。
人材ではなく、ノウハウを提供して伴走
クラスメソッドが米AWSと締結したSCAは、クラスメソッドやアマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)が個々に活動してきた人材育成や営業活動の一体化を可能とする契約である。「(両社で)一緒のチームを組み、顧客に対する活動や予算など具体的な目標を策定」(横田氏)することでAWS開発者育成を目指す。SCAを締結した国内企業はNEC(日本電気)、富士通に続いて3社目となる。
横田氏は「AWSが提供するサービスを使いこなし、AWSの構造を把握する。そして実践を通じて技能を蓄積し続ける」ことが、高い能力を持つAWS開発者だと定義した。具体的には(1)クラウドへの移行と最適化支援、(2)中堅中小企業と地方向けAWS導入支援の強化、(3)国内ISVによるSaaS開発支援――の3分野に注力する。
(1)クラウドへの移行と最適化支援については、クラスメソッドが取得するクラウド移行に関わる「AWS移行コンピテンシープログラム」と最適化に関する「AWS Well-Architectedパートナープログラム」を主軸に、技術系メディアによる情報発信や「半数の従業員が上位資格を持つ」(横田氏)1500以上のAWS認定資格を活用し、「人材提供ではなく、ノウハウ提供と伴走スタイル」(横田氏)で対応する。
その理由として横田氏は「IT人材不足に伴う内製化の実現は、(企業の従業員)自ら手を動かすことが大事。SaaS導入も選定眼が必要」だと、従来の開発者派遣ビジネスとは一線を画すことを強調した。
(2)中堅中小企業と地方向けAWS導入支援の強化は、システムの運用体制や予算不足といった課題に対する解決策となる。請求代行サービスによる割引や利用サポート、クラウド最適化に対する事前影響評価、従業員の訓練やセキュリティ対策も提供する。
(3)国内ISVによるSaaS開発支援では、スマートフォンで店舗に注文できる専用のミニアプリを「LINE」に作成できるプラットフォーム「CX ORDER」を提供するとともに、2020年9月に取得したパートナー企業のサービスをAWS Marketplaceで販売するプログラム「Consulting Partner Private Offers」(CPPO)を活用して拡販支援に努める。
AWSジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏
日本法人となるAWSジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏は「われわれは次の10年を見据えたクラウド人材の育成を日本全国で取り組んでいるが、AWSジャパン単独では難しく、パートナーの協力が欠かせない。(今回の締結はクラウド活用という市場需要に応えるという)ミッションを成し遂げる大事な一歩。日本法人も契約内容を履行できるように支援する」とコメントを寄せた。
クラスメソッドの横田氏も「各企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)推進や人材不足、各地域での課題を弊社の情報を(課題解決の)足がかりにしてほしい」と述べている。クラスメソッドの売上高は順調に推移し、2021年6月期は前期の約216億円を100億円程度上回る約304億円に達した。