DXは新たな段階へ--今後の方向性を探る

Charles McLellan (ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2021-10-14 07:30

 米ZDNetに先頃掲載された特集記事「Tech Budgets 2022」では、世界的な不況に直面した企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)によって柔軟性と回復力を高めており、デジタル面で成熟した企業の方がパンデミック後の時代において成功を収めやすいことを解説した。

 デジタルトランスフォーメーションは長年にわたって宣伝され、テストや導入が実施されており、その緊急度と成功の度合いは組織によって異なっていたが、今回、リモートワークへの短期間での移行を実現し、顧客体験と従業員体験(CXとEX)を含むビジネスプロセスのデジタル化が、厳しいストレステストにさらされた。

 市場調査会社のComputer Economicsは「IT Spending & Staffing Benchmarks 2021/22」レポートの中で、パンデミックからの急速な回復におけるテクノロジーの役割について、「奇跡にほかならない」と説明した。デジタルトランスフォーメーションはストレステストに合格したようだ。Computer Economicsは、クラウド移行の「簡単な目標」が達成された今、「デジタルトランスフォーメーションは既存のツールの置き換えだけでなく強化にも取り組む段階に入った」と指摘した。

 この記事と本特集の次回以降の記事では、デジタルトランスフォーメーションが次に進む可能性が高い方向について考察する。

アナリストの見解

 パンデミックが猛威を振るい、ワクチンの提供がまだ開始されていなかった2020年末、IDCは2021年以降のデジタルトランスフォーメーションに関する予測を発表した。

 最も注目すべき予測は、DXへの直接投資が2020年から2023年の間に合計6.8兆ドルを突破するというものだ。年平均成長率(CAGR)は15.5%に達する。IDCは、これにより世界のGDPの約3分の2(65%)が2022年までにデジタル化されるとしている。IDCの言う「デジタル化」とは、「デジタルが企業の既存の製品や追加のデジタルサービスにもたらす本質的な価値」のことだと、IDCのシニアバイスプレジデントのBob Parker氏がレポートに付随するウェブキャストで説明した。「したがって、デジタルトランスフォーメーションは実際のところ、最高情報責任者(CIO)というより最高経営責任者(CEO)の優先事項だ」(Parker氏)

デジタルトランスフォーメーションの予測。期間(x軸)とコスト/複雑さ(y軸)に関して図示。(提供:IDC)
デジタルトランスフォーメーションの予測。期間(x軸)とコスト/複雑さ(y軸)に関して図示。(提供:IDC)

 2021年のDXに関するIDCの予測を以下にまとめた。

  • DX投資の加速が経済的重要性を生み出す:経済は引き続きデジタル化に向かって進んでおり、世界のGDPの65%が2022年までにデジタル化される。また、DXへの直接投資が2020年から2023年の間に6.8兆ドルを突破する。
  • デジタル組織構造とロードマップの成熟:2023年までに、75%の組織が包括的なデジタルトランスフォーメーション実施のロードマップを策定する。現在の割合は27%だ。
  • デジタルマネジメントシステムの成熟:2023年までに、G2000組織のリーダーの60%がマネジメントの方向性をプロセスから結果へと変更し、より俊敏かつ革新的で共感的な経営モデルを確立する。
  • デジタルプラットフォームと拡張エコシステムの台頭:不安定な世界情勢を背景に、75%のビジネスリーダーが2025年までにデジタルプラットフォームとエコシステムの能力を活用して、自社のバリューチェーンを新しい市場、業界、エコシステムに適応させるようになる。
  • デジタルファーストのアプローチ:「デジタルファースト」はあらゆる体験に浸透しているが、2021年には60%の企業が従業員体験のデジタル化に多額の投資を行い、経営者と従業員の関係を変革する。
  • ビジネスモデルの改革:2021年までに、少なくとも30%の組織がイノベーションを加速して、ビジネスや運用モデルの改革をサポートし、トランスフォーメーションプログラムを急速に発展させ、自社のビジネスが未来に対応できるようにする。
  • 持続可能性とDX:2022年までに、大多数の企業がデジタルと持続可能性を組み合わせることで、より大きな価値を実現し、デジタル主導の持続可能なプロジェクトが一般的に実施されるようになる。
  • デジタルネイティブの文化:2025年には、デジタル至上の経済で成功を収めるために、50%の企業が顧客中心でデータ駆動型のアプローチに基づいて、DXに最適化された組織文化を実現する。
  • デジタル体験の加速:2022年までに、全組織の70%がデジタルテクノロジーの使用を加速して、既存のビジネスプロセスを変革し、顧客エンゲージメント、従業員の生産性、ビジネスの回復力を改善する。
  • ビジネスイノベーションプラットフォーム:2023年までに、G2000企業の60%が独自のビジネスイノベーションプラットフォームを構築して、ニューノーマルにおけるイノベーションと成長をサポートする。

 2022年のDXについて予想するIDCの次回のウェブキャストは、米国時間10月28日に配信される予定だ。

 これらの予想が実際にどれだけ実現しているのか確認してみよう。

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