SAPは、人事管理サービスのSAP SuccessFactorsの年次イベント「SuccessConnect」をオンラインで開催した。同社が2019年に「HXM=Human Experience Management(従業員体験ソリューション)」を打ち出して2年の現在、コロナ禍によりHXMはさらに重要になっているという。イベントでは社内の人材流動性を高める「SAP SuccessFactors Opportunity Marketplace」も発表した。
働き方と雇用関係が変化している
まずSAP SuccessFactors プレジデントのJill Popelka氏が、「仕事の概念は完全に変わった。従業員との関係、仕事の再定義が進んでいる」と切り出した。そこには3つのポイントがあるという。
1つ目は「職場での人間体験がより個人的なものになる」。従業員は自分が興味を持っていること、目標など「自分自身」を仕事に持ち込みたいと思っており、雇用主がそれに耳を貸すことを期待しているとPopelka氏は話す。
2つ目は「メンタルヘルスの重要性」。調査で43%が、「雇用主が燃え尽き症候群に真剣に対処してくれない」と述べており、「信頼があり個人をエンパワーする社風を作るために、境界線を調整して社員が必要な時には時間をかけられる環境」が必要という。
3つ目は「幹部よりも直属のマネージャーが重要」だ。Popelka氏は、「直線的なキャリアパスの時代が終わり、常時役割が変化する時代。従業員は常に学習してスキルを開発するが、そこではマネージャーが重要」と述べる。イノベーションや機会を拡大するためにチームがダイナミックに変化しなければならず、企業は人への投資がさらに重要になるとする。

SAP SuccessFactors プレジデントのJill Popelka氏
人事が果たす役割は大きい。新入社員のオンボード(入社手続きや初期研修)に始まり、事務処理をいかに自動化して負荷を軽減し、企業の戦略に人事戦略をどのように合わせるのか――リスキル(再教育)問題に対応が求められている。
人事のデジタルトランスフォーメーションの鍵を握るのは、クラウドとデータだ。SAP SuccessFactorsで最高収益責任者(CRO)を務めるMaryann Abbajay氏は、「変化する状況にすぐ適応できる正しい土台がクラウド」と述べ、最高製品責任者(CPO)のMeg Bear氏は、「クラウドがイネーブラーなら、データはツール」と述べ、データを活用したダイナミックかつパーソナライズされたソリューションにより、従業員を支援できると続けた。
従業員自らが機会を探す
SAPは、従業員に提案、機会、学習などについてパーソナライズされたコンテンツを表示する「SAP SuccessFactors Opportunity Marketplace」を発表した。
人工知能(AI)を利用することで、従業員に最適なタスク、メンター、スキル獲得のための学習などのコンテンツを表示することで、従業員が能動的にタスクを探したり、学習したりできる。管理職は、従業員のスキルや意向をより良く理解でき、最終的には業務へのリテンションやエンゲージの改善が見込めるという。

「SAP SuccessFactors Opportunity Marketplace」。その人に合わせたコンテンツが表示されるもので、デモでは自分に合う機会を探す従業員が一時的な配属に応募することを決定、履歴書やカバーレターをつけて30秒で応募を完了した
Opportunity Marketplaceは、SaaS型で提供する2021年下半期版の「SAP SuccessFactors HXM Suite 2H 2021」リリースの一部として提供される。
デモでは、将来の機能の構想として、チームリーダーが動的にチームを作る様子も見せた。現在のチームメンバーの能力やダイバーシティー(多様性)などのデータを分析し、チームに追加するメンバーをタレントサーチ機能で探したり、タスクが完了すると、自動的にチームメンバーにフィードバックと承認の入力を促したりする。

将来のビジョンとして見せたダイナミックチームのデモ画面