多くの場合、あるプロセスが役に立つと気づけば、企業はそのプロセスを取り込むものだ。しかし、金融業界のIT担当役員の69%がオープンソースのソフトウェアや手法は生産性を向上させると考えているにも関わらず、彼らはそのガバナンスの仕組みを導入することにはあまり積極的ではない。これは、Fintech Open Source Foundation(FINOS)が発表した調査レポートである「2021 State of Open Source in Financial Services Survey」に書かれていた内容だ。
Linux Foundation Research、Scott Logic、Wipro、GitHubが共同で実施したこの調査では、オープンソースの金融サービスが広く導入されているにも関わらず、まだまだ課題が多いことが明らかになった。
これは、多くの金融機関が、基本的に自分たちのビジネスやガバナンス戦略におけるオープンソースの役割を理解していないからだ。今回の調査で所属組織が「オープンソースファースト」であるかどうかを尋ねたところ、回答者の75%は「いいえ」または「わからない」と回答していた。また、ほかの業界では36%がオープンソースに対するコントリビューションを常に奨励するポリシーを持っているのに対して、この調査でそう答えた回答者は8%にすぎなかった。さらに、所属組織にオープンソースプログラムオフィス(OSPO)があるかどうかを知っていた回答者は、わずか35%だった。
私たちは、以前からこれに似た話をさまざまな企業で耳にしている。最高経営責任者(CEO)が、自分の会社ではオープンソースソフトウェアを使っていないとまったく誠実な態度で答えているにも関わらず、その会社ではあらゆるものがLinuxとオープンソースソフトウェアで動いているというのも珍しいことではない。しかし、それでは企業の経営はできない。現代のあらゆる企業はテクノロジーに依存しており、多くの場合、そのテクノロジーとはオープンソースを意味するからだ。
この状況は変わらなくてはならない。FINOSのエグゼクティブディレクターを務めるGabriele Columbro氏は、「オープンソースは、クラウドやフィンテックと同じように、この業界の戦略的テクノロジーの柱であるべきだ。私たちはこの数年間、歴史的に閉鎖的だった業界がオープンソースで劇的に改善するという考えを耳にしてきたが、金融機関やフィンテック企業が真にオープンな金融エコシステムを構築し、業界が必要としている次世代の技術スタックを実現するためには、あらゆる階層のリーダーが懸命に取り組む必要がある」と述べている。
Columbro氏は、銀行やその他の金融テクノロジー企業に対して、数字を見てほしいと話す。「調査結果は明確だ。金融業界の経営陣がオープンソースに全面的にコミットし、会社の内部でコラボレーションの文化を養えば、事業にプラスの影響が及ぶことは予想できるはずだ」
それは、オープンソースに関するポリシーを正式に定め、オープンソース戦略を策定することによって可能になる。オープンソースソフトウェアを使ってバリューを実現することに全員を巻き込むためには、この変化をトップから起こす必要がある。