本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NTTコミュニケーションズ 代表取締役社長の丸岡亨氏と、ServiceNow Japan 執行役員 ソリューションコンサルティング事業統括本部 部長の原智宏氏の発言を紹介する。
「社会や産業のDXを“3つの柱”と“3つの要件”によって推進していきたい」
(NTTコミュニケーションズ 代表取締役社長の丸岡亨氏)
NTTコミュニケーションズ 代表取締役社長の丸岡亨氏
NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)の丸岡氏は、同社が先頃オンラインで開催したプライベートイベント「NTT Commnications Digital Forum 2021」に合わせて記者会見し、DX(デジタルトランスフォーメーション)事業などの状況について説明した。冒頭の発言はその際、「社会・産業DX」と呼ぶ同社の事業展開について語ったものである。
会見の内容は関連記事をご覧いただくとして、ここでは丸岡氏の冒頭の発言に注目したい。「3つの柱」、さらに「3つの要件」とは何なのか。
その前段として、丸岡氏はウィズコロナ/アフターコロナでの企業の経営課題について、次のように述べた。
「新たなビジネスを創出していかなければならない一方、地球環境保護にも力を入れていかなければならないという、相反することに取り組んでいかなければならない。私たちはこの2つの課題を『産業・社会DX』によって同時に実現していきたいと考えている」
社会・産業DXという表現には、文字通り「社会や産業のDXはNTT Comが担っていく」という強い意思が感じられる。
丸岡氏はこう述べた上で、同社が推進する社会・産業DXについて、図1を示しながら、冒頭の発言の内容について次のように説明した。
図1:社会・産業DXに向けた取り組み(出典:NTTコミュニケーションズ)
まず、3つの柱とは、データを活用する横軸の3層構造からなる同社のサービスのことだ。下段の第1層となる「ICTのTransformation」は、データを収集する基盤の変革を指す。中段の第2層には、第1層で収集したデータを蓄積し分析する「Smart Data Platform」が位置付けられる。そして上段の第3層は、第2層でデータ分析した結果を世の中に還元していく「Smart World」となる。
これら3つの柱は、同社が数年前から順次、整備してきたもので、クラウドサービスでいえば、下段からIaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)に相当する形となる。
そして、3つの柱を縦断する形の「データの共有」「トラスト(信頼)」「共創」が、3つの要件である。
丸岡氏によると、「データを共有すれば、その価値は高まる。そうなれば一層、安全で安心できるデータの扱いが重要となり、それがトラストにつながる。そうした信頼できるデータによって、お客さまやパートナー企業と一緒に新たな世界を共創していくのが、社会・産業DXだ」といった意味合いだ。
トラストのところは「セキュリティ」でも良さそうな気もするが、そうでないのがミソだ。というのは、DXはテクノロジーだけでなくビジネスもマネジメントも一緒にトランスフォーメーション(変革)する必要があるからだ。よって、全てに通じるトラストがふさわしいというのが、筆者の見立てである。