本連載は、これまで現代ビジネスにおけるコンポーザビリティーの重要性と、コンポーザブルなビジネスの実現に向けてSitecoreが提供している「コンポーザブルDXP」を例に解説してきた。その中で、度々データのコンポーザビリティーについても触れてきた。
今回は、データをどのように集約し、運用していくのかという重要なポイントについて、データ活用を支えるテクノロジーのカスタマーデータプラットフォーム(CDP)に焦点を当てながら、データ管理と活用に関する疑問や課題に対する考えをまとめていく。
クッキーレス時代のデータ活用に必要なテクノロジー
CDPは、自社が保有する顧客に関する多種多様な「ファーストパーティーデータ」を収集、蓄積、管理するためのプラットホームを指す。CDPを用いることにより、企業は、自社の既存顧客の情報を複数のデータソースから集約し、広告ターゲティングや顧客とのコミュニケーションにおけるユーザーエクスペリエンスの向上に向けた施策を実施できるようになる。つまり、CDPを用いてユーザーの一人ひとりの情報を分析することで、ニーズに合わせた情報発信のパーソナライゼーションができるということだ。
しかし、CDPを活用したユーザーエクスペリエンスの向上には、ユーザーがどのような人物なのかを明確化させるためのデータが必要となる。ここで必要とされるデータは、「氏名」「年齢」「生年月日」「性別」といった基本的な個人情報関連のデータや「店舗の来店履歴」「購買情報」といったオフラインでの行動から取得したデータ、「自社サイトへのアクセスログ」「サイトアクセスに使用した端末」のようなオンラインで取得したデータなどだ。
これらのデータは、データソースが大きく異なるため、企業内で分散的に管理されていることが多い。そして、個別に利用するだけでは、それほど大きな価値をもたらさない。だが、CDPを用いてバラバラに管理されているこれらのデータを統合、分析することにより、自社の顧客の人物像を明確に描き出すことが可能になり、その人物像に適したコミュニケーション方法でユーザーに情報を届けることが可能になるというわけだ。
このようにCDPは、自社の保有するデータの集約や分析などで大きな役割を果たすテクノロジーだ。実は、今回データ活用を支えるテクノロジーの例としてCDPを取り上げた背景には、今後のマーケティング戦略に大きな影響を与えるメガトレンドが存在する。個人情報保護の規制強化と主要ブラウザーによるCookie(クッキー)のサポートの終了だ。
日本では、改正個人情報保護法の施行が2022年4月に予定されており、オンラインにおける個人情報の取り扱いがより厳重になるといわれている。また、欧米諸国を中心とした個人情報保護の動きに呼応するように、SafariやFirefoxといった主要ブラウザーは、「サードパーティークッキー」のサポートを終了している上、Chromeもサードパーティークッキーへの対応を終了させる予定だとしている。これらの変化により、第三者提供のデータの流通は大きく制限されることになる。
このメガトレンドは、既存のマーケティング活動を破壊するほどの影響力を持っている。インターネットが普及してから現在に至るまでの約20年のデジタルマーケティングは、サードパーティークッキーがこれを支える立ち位置を確立してきた。クッキーには、ユーザーが過去にどのようなサイトを訪問して自社のサイトに到達したのかといった、オンライン上でのユーザーの行動情報が含まれており、この情報をもとに数多くのマーケティング施策が実行されてきた。しかし、昨今の個人情報保護の規制強化により、クッキー情報は個人情報として捉えられるようになってきており、第三者への受け渡しには、ユーザーからの同意取得が求められるケースが増えている。
そうなると、必然的にサードパーティークッキーの流通は減少してしまうわけだが、その上で主要なブラウザーがサードパーティークッキーのサポートを終了したとすると、実質的にはサードパーティークッキーは使用不可となってしまう。つまり、自社に適するユーザー像に当てはまる人物を第三者から提供されるデータをもとに割り出し、広告などを発信するというこれまでの「当たり前」が不可能になるということだ。
そうなってしまえば、既存顧客を中心とする自社とつながりのあるユーザーへのアプローチの重要性が必然的に高まる。その時、大きな力を発揮するのがCDPというわけだ。