Zendeskは10月22日、顧客体験(Customer eXperience:CX)の熟成度とビジネスの関連性に関する調査結果を発表した。同社はCX成熟度に応じて「スターター」「エマージング」「ライザー」「チャンピオン」の4種類に分類。CX成熟度の高いチャンピオンが顧客満足度の向上や応答時間の短縮、効果的な顧客サービスの実現など効果をもたらすことが改めて明らかになった。
Zendesk 社長 冨永健氏
Zendesk 社長 冨永健氏は「従来は(顧客から)問い合わせを受けて、素早く問題を解決するのがゴールだったが、強固な顧客との関係を築くには、処理だけではない。対話が重要だ」と主張する。
カスタマーサービス部門のデータを活用する海外勢
4~6月に世界14カ国、3250人(日本は208人)のカスタマーサービス部門に属する意思決定者を対象に、CX熟成度の状況を調査した。同社によるCX熟成度分類に従うと、最も進んでいるチャンピオンは12%(日本は2%)、続くライザーは19%(同4%)、実績を出せていないエマージングは32%(同20%)、ほぼ未着手のスターターは36%(同73%)。
グローバルで見るとチャンピオンは1年前の調査結果だった8%から順調に増加している。前回2020年の調査では、日本のチャンピオンはゼロ%だったが、2%となっている。
スターターと比較してチャンピオンはビジネス面でも有益な効果を打ち出している。コロナ禍でもCXへの投資を加速させることで、ビジネスの回復力を高めた割合はスターターの9.6倍、顧客基盤の拡大はスターターの3倍、顧客単価の向上に成功した割合はスターターの6.1倍。カスタマーサービスで直接発生する収益が運用コストを上回っている“プロフィットセンター”を運営している割合はスターターの2.3倍だった。
一見すると顧客に対応するコンタクトセンターはコスト部門と捉えがちだが、自社のカスタマーサービスチームをプロフィットセンターと認識する割合は日本32%、米国61%と倍の開きがある。
チャンピオンの特長として、サービス部門のデータを広範囲に利用している割合がスターターの9.1倍であることにZendeskは注目。売り上げ拡大のためにコンタクトセンターのデータを利用している割合が87%、対する効果は76%におよぶ。
この流れを「ゲームチェンジャー」として捉えるチャンピオンの割合はスターターの10.4倍と大きく、認識率の観点から見るとグローバルは51%、日本は65%だった。「(日本は)顧客データの活用が進んでいないため、高い数値が現れた」(冨永氏)
ただし、自社のCXプロジェクトを加速させた企業というデータでは、米国71%、韓国67%、オーストラリア65%に対して日本は37%と著しく低い。
グローバルでは顧客との対話重視を目標に掲げる企業は87%と圧倒的。チャンピオンに限定すると他の分類に比べて2.5倍の開きがある。だが、コミュニケーションチャネルの観点で見ると、スターターは平均6.3、チャンピオンは平均8.2のチャネルを使いこなしている。冨永氏は「さまざまなチャネルに対応しなければならない」と奮起をうながした。
CXへの投資がオペレーターの定着率向上につながるか否かの観点では、チャンピオンはスターターの4.2倍となっている。また、コロナ禍収束後も在宅勤務のオペレーター数は21%増加と予測する企業がいることも分かった。
冨永氏はCXプロジェクトを「社長の仕事」にすべきとしている。日本企業が増えてない理由として、個人的な意見と前置きしながら冨永氏は以下のように解説した。
「社長自身がデジタルに明るい方が少なく、CIO(最高情報責任者)に任せてしまう。日本企業は個別最適が得意だが、全体最適が不得手。個別最適は連帯感を生み出すが、全体最適の障壁となる」
コンタクトセンターがプロフィットセンターになるためには、どうすべきか。冨永氏は「営業とカスタマーサポート部門が一緒になった顧客接点部ができているかもしれない」とコンタクトセンターは顧客からの問い合わせに対応するとともに、顧客に製品やサービスを販売する機能を有することでアップセルやクロスセルが融合することも可能との見方を示した。
同社のSaaSとユーザー企業のサービスを対話型のコミュニケーションにつなげる「Sunshine Conversations」を実装した。冨永氏は「たとえば旅客機予約であれば、チャットに旅客機の座席予約変更や座席管理システムと連携する機能を入れ込むことで消費者の需要を満たす。また、オペレーターは人が介在しないと難しい内容だけに集中できる」と同機能を説明している。