インフラ基盤構築などを行うＢＦＴは、ボードゲームを通してプロジェクトマネージャー（PM）を育成する「100人月研修」を社内研修制度に導入した。同研修は、ビジネスシミュレーションツールを提供する企業・創作の協力のもと開発された。
100人月研修の様子（出典：ＢＦＴ）
近年、PMの人材不足が社会的な課題となっている。マーケティング支援事業を行うネオマーケティングが2020年2月に実施した「プロジェクト推進に関する意識調査」によると、回答者の約7割が「スキル不足のPMが多い」と感じており、PMの教育の重要性がうかがえる。
これまでＢＦＴでは、20代後半～30代前半を対象とした次期リーダー研修やプロジェクトマネジメント研修を用意しておらず、部署単位で育成してきた。中には、40～50人月（にんげつ）規模のプロジェクトのリーダーを早くから経験する若手もいるが、100人月規模のプロジェクトのマネジメントを経験する次期リーダー層がなかなか育たず、人材育成に課題を感じていた。そこで今回、100人月規模のプロジェクトのマネジメントができる人材を育てるべく、ボードゲームを通してPMを育成する100人月研修を開発・導入した。
100人月研修では、「シミュレーションゲームは何度もチャレンジできる」「研修だと構えてしまうが、ゲームだと気軽に取り組める」といった理由からボードゲーム形式を採用。ゲームのストーリーやコンテンツは、ＢＦＴ社内にいる100人月規模のプロジェクトマネジメント経験者、それに近い人材に「マネジメントの勘所」をヒアリングして制作した。
その中で、マネジメントのテクニックよりも「メンバーとの信頼関係」に重きを置く声が多く挙がったため、ボードゲームの随所に信頼関係を数値で関連付けた「仕掛け」を作ったという。
100人月研修におけるプレーヤーの設定は、「小規模プロジェクトのPMや大規模プロジェクトのチームリーダー（TL）としての経験を重ねてきたＢＦＴの若手従業員」。会社からは将来的に大規模プロジェクトのPMになると見込まれている期待の星だという。
ゲームストーリーは、ある時PMの「竹本さん」から声がかかり、ある企業の総合金融プラットフォームで活用する「統合データベース（DB）の移行プロジェクト」に関するSES（システムエンジニアリングサービス）の案件を担当することになった。
プロジェクトは要件定義を終えており、段階的に移行を実施する予定。プレーヤーは8カ月間で、統合DBの中でオンプレミスの別基盤に移すDB／クラウドの別基盤に移すDB、保守運用に関連するシステム（ジョブ管理、監視、バックアップ）の設計／構築／移行、システム結合テストを行わなければならない。
プロジェクトでは、PM1人、TL4人、メンバー7人という計12人のチームを4つ組むことになった。PMの竹本さんからは、今回のプロジェクトをきっかけにチーム全体のリソースマネジメントや顧客企業からの相談対応も協力して取り組んでほしいと伝えられた。プレーヤーは周囲と協力してプロジェクトを円滑に進めつつ、顧客企業の満足度を高めることができるだろうかーーという内容である。
先日実施したプロトタイプのテスト研修に参加した従業員からは、「現実にしっかりと即しており、チームの動かし方を学ぶことができた」「問題が発生しそうな所は事前に対処しておくなど、リスクヘッジを学ぶことができた」などの声が挙がり、普段と異なる雰囲気の研修に満足している様子だったという。
今後は、社内のフリースペースにボードゲームを設置し、スコアを社内で開示して競い合うなど、研修以外でもゲームができる環境を整えることで、より多くの従業員が自発的にプロジェクトマネジメントを学べるようにする。
