DXプロジェクトとITリーダーの本音--過去の失敗が与える影響

Aimee Chanthadavong  (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2021-10-28 07:30

 状況にどう対応するかは、過去の経験によって決まることが多い。それはデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むテクノロジー部門の幹部も同じだ。そして彼らの多くにとって、デジタルトランスフォーメーションプロジェクトの経験は決して良好なものではない。

 企業は莫大な金額を投じたプロジェクトで、デジタルテクノロジーによって自社のプロセス(場合によってはビジネスモデル全体)のアップグレードを図っている。だが、そうしたプロジェクトのすべてが成功を収めるわけではない。

 英国の大規模組織のIT意思決定者500人を対象に実施された調査(ソフトウェア企業Citrixが委託)では、85%の回答者が、大規模なデジタルトランスフォーメーションプロジェクトでの過去の経験は重要だと考えており、以前のプロジェクトで得た経験が現在の同様のイニシアチブに対する見方や対応方法に影響を与えていると答えた。

 ここで、残念な調査結果を紹介しよう。回答者の半数以上は、デジタルトランスフォーメーションプロジェクトが当初の計画どおりに進まなかったために「深く傷ついて」しまい、こうした嫌な経験が原因で将来のデジタルトランスフォーメーションプログラムに尻込みするようになったという。プロジェクトが現実的にやや困難だったという回答も同様の割合だったが、ITリーダーのほぼ全員(94%)が、成功を確信して最初のデジタルトランスフォーメーションプログラムに着手していた。

 とはいえ、ほとんどの幹部は失敗から学んでいる。87%はデジタルトランスフォーメーションプロジェクトの失敗を経験しているが、多くの場合、その経験を有効に活用していると回答した。実際に、43%が経験から学び、将来の取り組みに役立てることができると答えており、29%は失敗によって新しいビジネス要件を特定できたことを認めている。

 「こうした新たな調査結果は、デジタルトランスフォーメーションプログラムが実施担当者に良くも悪くも大きな影響を及ぼすことを明確に示している。必ずしも『計画どおり』に進まなかったとしても、過去に成功したプロジェクトに関与した人が多くいることは、励みになる。ビジネスにとって重要であるため、新しいイニシアチブに臆することなく取り組んでいく」。Citrixの英国とアイルランドのリージョナルバイスプレジデントを務めるMark Sweeney氏はこのように述べた。

 一方で、テクノロジーリーダーの44%が、将来の新しいデジタルトランスフォーメーションプログラムに取り組む自信がなくなったと回答しており、51%は以前よりも悲観的になったと答えている。

 Sweeney氏にとって、こうした過去の残念な経験は必ずしも悪いことではない。ITリーダーはそのような経験をしても落胆すべきではない、と同氏は主張する。

 予算超過、進捗の遅れ、期待との不一致などの要因によって、プログラムが失敗と判断されることもあり、リーダーは将来のプロジェクトに役立ちそうな教訓について熟考し、失敗の経験を今後に生かすことが重要だ、とSweeney氏は述べた。

 「意思決定を行うリーダーが時間をかけてデジタル体験プロジェクトを効果的に計画し、従業員体験も確実に考慮に入れることが重要だ」

 Gartner ANZのバイスプレジデント兼マネージングエグゼクティブパートナーであるBrian Ferreira氏によると、過去の良くない経験に悩まされるのは珍しいことではないという。一方で、ITリーダーがデジタルトランスフォーメーションプロジェクトの推進に消極的になる原因は、過去の経験だけではなく、これらのプロジェクトを最大限に活用する方法を考え出さなければならないことにもある。

 「私たちは、プラットフォームを用意するのはとても得意だ」とFerreira氏は語る。

 「しかし、ビジネス部門を巻き込んで『これをどのように使いたいか』と聞くには時間がかかる。それが問題だ。従業員と顧客の間、あるいは従業員と市民の間のエンドポイントで、どのように使用するのか。われわれが『民主化されたテクノロジー』と呼ぶものが、ためらいを生じさせるポイントだ」

 そうしたためらいとは無関係に、デジタルトランスフォーメーションプログラムは勢いを増している。Ferreira氏は、今後のトランスフォーメーションプロジェクトが次の2つの形態のいずれかをとると考えている。1つ目は、トランスフォーメーションを可能にする適切なテクノロジープラットフォームが配置されるという形態だ。2つ目の形態では、クライアント向けの修正を施す前に、基盤のテクノロジーに変更を加えることに重点が置かれる。

 Sweeney氏は、たとえ過去に失敗があったとしても、これらのプロジェクトには同じくらい壮大な目標があるという考えだ。

 「将来的に、デジタルトランスフォーメーションプログラムはあらゆる規模の企業でかつてないほど壮大なものになり、豊富な経験を持つさまざまな人がプログラムを主導するようになるだろう。興味深いことに、過去に失敗を経験したという回答が多いにもかかわらず、将来のプロジェクトを無難なものにしようという意向が現在の意思決定者にみられない。これは、より多くのイノベーションがかつてない速さで起きる可能性が高いことを示している」とSweeney氏は語った。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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