データ分析の高度化でシステム基盤が足かせに--ローソンが進める“真のDX”とは

藤本和彦 (編集部) 阿久津良和

2021-10-28 07:00

 SAS Institute Japanは10月21~22日にかけてオンラインイベント「SAS Forum Japan 2021」を開催し、デジタル変革(DX)に取り組む顧客事例などを紹介した。本稿では、多様化するデータ分析基盤をSASのアナリティクスで実現したローソンの事例を取り上げる。

ローソン 執行役員 ITソリューション本部長の原田和浩氏
ローソン 執行役員 ITソリューション本部長の原田和浩氏

 ローソン 執行役員 ITソリューション本部長の原田和浩氏は同社のDX戦略について語り、「主戦場は顧客体験と省力化にある」と強調。また「DXで一番大事なのは、数多くの企画を生み出していく実行能力であり、その先に真のDXがある」と語る。早い段階からクラウドの活用を進め、人工知能(AI)やロボティクスプロセスオートメーション(RPA)なども実業務の利用で成果が出てきている。「DXを支えるシステム基盤が非常に重要になる」(同氏)とし、直近ではデータレイクの稼働を開始した。

 「2025年の崖を自分事として捉え、レガシーシステムを刷新していく案件が今後も続いている。コストの平準化や新しい取り組みを通じて、社内でのDXリテラシーを高めていきたい」(原田氏)

真のDXに向けたデジタル・ITストラテジー
真のDXに向けたデジタル・ITストラテジー

 コンビニエンスストアを展開するローソンは、消費者が利用する各種カードや「LAWSON ID」に、全国の店舗や取り扱う商品の管理など、日々膨大なデータの管理・分析に追われてきた。分析結果は本部や事務所、工場や配送、各店舗を指導するスーパーバイザーなど各場面で活用しているが、同社 ITソリューション本部 コーポレートシステム部 アシスタントマネージャーの渡邉裕樹氏は「データ分析の高度化でシステム基盤が足かせになっている」と吐露する。

 同社は2009年から「SAS Enterprise Guide」を活用したデータ分析人材100人、「SAS Add-in for Microsoft Office」を利用したデータ活用を全社員で利用中。ビジネスやイベントで発生するPOSデータは20TBを超え、気象などの環境データや100種類以上のレポートも用途に使い分けて利用している。このように人材面、データ面は問題ないものの、既存の情報系システムでは「データの管理や高度な分析が困難」(同氏)な状況だという。

ローソン ITソリューション本部 コーポレートシステム部 アシスタントマネージャーの渡邉裕樹氏
ローソン ITソリューション本部 コーポレートシステム部 アシスタントマネージャーの渡邉裕樹氏

 ローソンはこうした課題を解決するため、自社が持つ全てのデータを管理する「METISプロジェクト」を立ち上げた。ギリシャ神話に登場する英知の女神メーティスと絡めて、「Managerial Enterprise Transformation Intelligence System」の頭文字をまとめた造語である。データレイクに「Amazon S3」、データウェアハウスに「Amazon Redshift」を用いてデータ分析基盤を構築し、機械学習には「Amazon SageMaker」を選定している。SAS Enterprise GuideやSAS Add-in for Microsoft Officeなどを定型分析・自由分析を実現するフロントツールとして活用することで、全社横断的な分析データの提供を実現した。

 例えば、データの定型分析を行う際は、SAS Add-in for Microsoft Officeを組み込んだ「Microsoft Excel」を起動し、あらかじめSAS Enterprise Guideで作成したストアドプロセスをワンステップで実行できるようになっている。

ローソンが構築したデータ分析基盤
ローソンが構築したデータ分析基盤

 現在、ローソンではシステム基盤の刷新を終え、次の取り組みに着手している。METISのデータ統合基盤に定型分析で利用するフロントツールを新規導入し、既存の情報系システムで実行していた定型分析画面の取り込みを予定している。最終的には既存の情報系システムを完全撤廃し、METISがデータ収集から分析までを担う。

 「当然ながら利用者も成長しなければならない。データ分析担当者の教育・展開も並行」(渡邉氏)して行う予定だ。現時点では想定段階だが、フロントツールとしては「SAS Visual Analytics」などのビジネスインテリジェンス(BI)製品を選定し、「データ活用レイヤーの統合、展開を検討している。また、今後はアジャイル開発が望ましい。利用者と会話しながら開発し、場合によってはデータウェアハウスの拡張も検討する」(同氏)

 渡邉氏は講演の最後で「データ活用で重要なのは拡充と整備、そして管理。これらがそろってビッグデータの分析が可能になる。他サービスと連携させながら各場面で活用し、新たな価値の創造を目指す」と意気込みを語った。

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